このページは、治療の相談に向けた“下調べ”をやさしく整理するためのガイドです。
医師から「CD22(シーディー22)」という言葉を聞いた方が、まず全体像をつかみ、自分の状況にどう関係するかを考える助けになるように書いています。最終判断は必ず主治医とご相談ください。
1. CD22とは?——まず“ひとことで”
- ひとことで:CD22はB細胞(免疫を担う細胞)の表面にある“ブレーキの役目も担う”分子です。B細胞由来の血液がん(B系白血病・リンパ腫など)では多くのケースでCD22が見られ、**目印(ターゲット)として薬が結びつき、がん細胞を狙い撃ちする設計に活用されています。CD22は薬が結合すると細胞内に取り込まれやすい(内部化しやすい)**性質があり、薬を細胞内へ“運び込む”タイプの治療と相性が良いのが特徴です。BioMed CentralPMC+1

2. CD22が関わる主ながん——自分に関係する?
- B前駆細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL):9割以上でCD22陽性が報告され、再発・難治例でCD22を狙う薬が選択肢になります。PMCBioMed Central
- B細胞性リンパ腫(例:濾胞性、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 等):多くでB細胞系マーカー(CD19/20/22等)が検出され、研究・治験が進んでいます。NCBI
- 有毛細胞白血病(HCL):CD22が強く発現する典型例の一つとして知られます。Labcorp
ここがポイント:**CD22は主に血液がん(B細胞由来)**での話題です。固形がんのHER2とは検査も治療の考え方も異なります。
3. CD22の調べ方(検査)——結果票の“どこを見る?”
まずは、ご自身の病理・フローサイトメトリー(FCM)の結果や骨髄検査・血液検査の免疫表現型に、CD22の記載があるかを確認してみましょう。
3-1. フローサイトメトリー(血液や骨髄の細胞表面マーカー)
- 標準的な方法:白血病・リンパ腫の診断でB細胞系(CD19/20/22/79aなど)をまとめて評価します。CD22はB系の同定に有用で、残存病変のフォローにも使われます。NCBI
- 読み方の例:「CD19/20/22陽性、CD10陽性、軽鎖制限あり」など“組み合わせ”でB系腫瘍かどうかを判断します。HCLでは**CD22が明るい(bright)**と記載されることも。Labcorp
3-2. 免疫染色(IHC)/その他検査の位置づけ
- 固形がんで頻用されるIHCも血液腫瘍で用いられることはありますが、血液がんではFCMが中心です。状況により**遺伝子検査(NGS等)**と併せて全体像を把握します。NCBI
3-3. 検査結果の読み取りミニTips
- **“陽性/陰性”の一言だけでなく、**どのくらいの割合・強さで出ているか、他のB細胞マーカーとの組合せを見るのがコツです。
- 再発を繰り返すと標的が弱くなる/消えることがあり、CD19→CD22など**標的の“スイッチ”**を考える場面もあります(主治医と要相談)。Wiley Online Library
4. CD22をねらう治療——“役割分担”のイメージで理解
治療の種類ごとに**「何をしている薬か」**をイメージすると理解が進みます。
4-1. ADC(抗体薬物複合体:例 イノツズマブ・オゾガマイシン)
- 仕組み:CD22に結合する抗体に、強力な抗がん薬(ペイロード)をリンカーでつないだ“運び屋”タイプ。CD22は内部化しやすいため、細胞内へ薬を運ぶのに向いています。PMC
- 代表薬:イノツズマブ・オゾガマイシン(Besponsa)
— 成人の再発・難治B前駆細胞性ALLでFDA承認。さらに小児(1歳以上)にも適応拡大(2024年3月)。日本を含む各国の承認状況は異なるため、国内最新情報は主治医と確認を。U.S. Food and Drug Administration+1
4-2. 免疫毒素(開発・販売状況に注意)
- モキセツズマブ・パズドトキス(Lumoxiti):CD22に結合する免疫毒素としてHCLで米国承認がありましたが、2023年に米国市場から販売中止が告知されています(医療現場では在庫や代替の扱いが変動)。利用可否は最新状況を要確認。Cancer NetworkOncLive
4-3. CAR-T療法(CD22単独/CD19との二重標的など)
- CD22単独CAR-TやCD19/CD22の二重標的CAR-Tの臨床試験が進行し、大細胞型B細胞リンパ腫等で有望な成績が報告されています(開発段階のため施設・適格基準は限定的)。ランセットがん情報センター
4-4. 併用の考え方
- 化学療法や年齢・病期に応じた造血幹細胞移植、他標的治療(例:CD19)とのシークエンスなど、全体設計の中で最適化します(人により答えが異なります)。
5. 副作用と観察ポイント——“早めの相談”がコツ
- イノツズマブ・オゾガマイシン:肝の類洞閉塞症候群(VOD/SOS)、感染症、血球減少など。移植前後の使い方や肝機能モニタリングが重要です。U.S. Food and Drug Administration
- 免疫毒素:毛細血管漏出、腎関連、過敏反応など(薬剤により異なる)。販売状況・投与可否は最新情報を確認。Cancer Network
- CAR-T:サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、B細胞無形成に伴う低ガンマグロブリン血症など。専門施設での管理が基本です。ランセット
大切なお願い:自己判断で中止しないでください。小さな異変でも、医療スタッフに早めに共有しましょう。
6. 治療を選ぶまでの“道順”——主治医と話すときのメモ例
- 検査の確認:CD22の有無・強さ、他のB細胞マーカー(CD19/20/79a等)、染色体・遺伝子異常、残存病変(MRD)の状態。NCBI
- 現状の把握:病期、合併症、移植歴、年齢、通院事情・生活の希望(仕事・学業など)。
- 選択肢の比較:標準治療・ガイドライン・臨床試験の候補を並べ、利点/注意点を見比べる。がん情報センター
- 計画を決める:優先したいこと(治療の強さ、入院/外来、移植の是非 等)をメモして共有。
7. よくある質問(FAQ)——悩みやすいポイントだけ
Q1. CD22陽性と言われました。必ずCD22標的薬が必要ですか?
A. 病型・治療歴・年齢・他マーカーで最適解は変わります。標準治療や臨床試験も含めて総合的に検討します。
Q2. CD19治療の後でもCD22は使えますか?
A. 再発時に標的の発現パターンが変わる例があり、CD19→CD22、または二重標的を考える場面があります(検査で確認)。Wiley Online Library
Q3. 小児と成人で違いは?
A. 病型や耐容性が異なり、薬の適応年齢もそれぞれです。たとえばイノツズマブは**小児(1歳以上)にもFDA承認(再発・難治B-ALL)**が拡大しています。U.S. Food and Drug Administration
Q4. 固形がんのHER2と同じ“検査スコア”はありますか?
A. CD22は主に血液がんの指標で、フローサイトメトリー中心の読み方です。HER2のIHCスコア(0/1+/2+/3+)とは別物です。NCBI
8. 用語ミニ辞典——“ひとことで”理解
- B細胞:抗体を作る免疫細胞。B系の白血病・リンパ腫はここから発生。
- CD22:B細胞にある表面分子。内部化しやすい性質があり、薬の“運び屋”設計に活用。PMC
- ADC:抗体に抗がん薬を“荷物”としてつけ、標的細胞内に運ぶタイプの薬。
- 免疫毒素:抗体に毒素を結合させた薬。
- CAR-T:患者さん自身のT細胞を加工し、**特定の目印(CD22など)**を認識して攻撃するようにした治療。
- フローサイトメトリー(FCM):血液・骨髄の細胞表面にある目印(CDマーカー)を同時に多数測れる検査。NCBI
9. 参考の探し方
- 国立・公的機関の患者向け血液がん情報
- 学会・ガイドラインの一般向け解説
- 治験・臨床試験の情報(ClinicalTrials.gov などで「CD22」「B-ALL」「CAR-T」等の組合せ検索)がん情報センター
- 外部サイトは更新されます。検索時は「疾患名+CD22+患者」などの組み合わせがおすすめです。
10. 免責事項
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療は個別性が高く、最終判断は必ず主治医にご相談ください。Trial Compassは医療行為を提供しません。