はじめに(疾患背景と現行治療の課題)
膵臓がんは診断時に進行・転移しているケースが多く、治療選択肢が限られます。標準的な治療としては、ゲムシタビンやフルオロウラシルなどを用いた化学療法が用いられるものの、効果が限定的で予後改善には課題があります。特に複数の治療が奏功しなくなった症例では、新たな治療戦略の必要性が高まります。
本試験では、Claudin 18.2(CLDN18.2)を発現する局所進行・切除不能または転移性膵がんを対象に、IBI343モノセラピーとベストサポーティブケア(BSC)との併用をプラセボ+BSCと比較することで、生存期間延長の可能性を探る第III相試験として意義があります。
標準治療後の治療選択肢拡大を模索するうえで、今後の展開に期待されます。ctv.veeva.comICHGCP
治療の位置づけ(+やさしい解説)
専門的な説明
IBI343は抗CLDN18.2抗体とDNAトポイソメラーゼI阻害薬とを結合させた抗体薬物複合体(ADC)です。
その作用機序として、CLDN18.2陽性腫瘍細胞に結合後、薬物が細胞内に運ばれてDNAトポイソメラーゼIを阻害し、がん細胞のDNA損傷を誘導して死滅を促します。
本試験では、ベストサポーティブケア(BSC)との併用により、既治療例における全生存期間(OS)の改善が検証されており、腫瘍進行後の治療として位置づけられます。
効果や安全性については現在検証中です。AdisInsightctv.veeva.com
やさしい解説
IBI343は、がん細胞にくっつく“目印”(CLDN18.2)を狙って運ばれる薬です。
がんの内部でDNAを壊すことで、がん細胞が死にやすくなります。
これまでの治療で効きにくくなった膵がんに対して、サポート治療と組み合わせることで、長く生きる可能性があるかどうかを調べています。
ただし、効果や安全性についてはまだ調査中です。
患者さん向け解説
どんな治療なの?
この治療は、IBI343という新しいお薬を、がんに直接働きかけるよう工夫した薬と組み合わせて使います。
IBI343は、がん細胞の特定の目印であるCLDN18.2に親しくつき、内部でDNAを壊すことでがんを攻撃します。
プラセボ(偽の薬)ではなく、実際に薬が働くかどうか、生存期間が長くなるかどうかを調べる治験です。治療効果や安全性は現在検証中です。
治療の流れ
- 初回にIBI343またはプラセボを点滴で投与し、ベストサポーティブケア(BSC)と併用します。
- その後も定期的に点滴で投与し、効果と副作用を確認しながら継続します。
(投与間隔や詳細なスケジュールは公表情報なし)
どのくらい通院が必要?
投与ごとに通院が必要です。具体的な頻度(例:週1回、3週間に1回など)は公表情報なしですが、定期的な通院が必要であることは本試験でも共通しています。
どんな検査があるの?
- 血液検査(臓器機能、血球数など)
- 画像検査(CTなどでがんの状態を確認)
– その他に公表情報なし
日常生活の注意点
体調の変化、たとえば食欲が落ちる、強い疲労を感じる、発熱や息切れなどがあれば、すぐに医療機関に連絡することが大切です。無理のない生活を心がけましょう。
参加を検討する方へ
この治療はまだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。また、副作用のリスクもあります。参加の可否やリスク・ベネフィットについては、必ず主治医とよく相談してください。効果・安全性は検証中です。
試験概要
- 試験番号(NCT)/正式名称
NCT07066098/A Multicenter, Randomized, Double-Blind, Phase III Study of IBI343 Monotherapy Plus Best Supportive Care Versus Placebo Plus Best Supportive Care in Participants With Claudin (CLDN) 18.2-Positive, Locally Advanced Unresectable or Metastatic Pancreatic Cancer Who Received ≥2 Prior Lines of Therapy.ICHGCPLarvol Clinical - スポンサー情報
Innovent Biologics (Suzhou) Co. Ltd.ICHGCP - フェーズ/デザイン
第III相/多施設、無作為化、二重盲検、有効薬(IBI343)+BSC vs プラセボ+BSC。ctv.veeva.comICHGCP - 対象疾患とバイオマーカー条件
局所進行または転移性膵がん(切除不能)、CLDN18.2陽性、少なくとも2種類以上(フルオロウラシル系およびゲムシタビン系)治療後進行例。ctv.veeva.comICHGCP - 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
IBI343またはプラセボを点滴投与し、BSCと併用。詳細な間隔等は公表情報なし。ICHGCPctv.veeva.com - 登録予定数と期間
登録予定数:201名。開始時期は2025年7月以降の予定。ICHGCPSynapseAdisInsight - ステータス
現在「Recruiting」(募集中)。ICHGCPctv.veeva.com - 治験参加国
中国(少なくとも上海で実施)。ICHGCP - 出典リンク
ClinicalTrials.gov 試験登録ページ(NCT07066098)ICHGCPClinicalTrials.gov
試験進捗状況
- 登録状況:募集中(Recruiting)で、201名の参加を予定しています。ICHGCP
- 最終更新日:2025年8月14日付で更新あり。ICHGCP
- 日本の参加有無:公表情報なし(中国のみ記載されており、日本での施設情報はありません)。
世界の疫学データ
膵がんは世界的に死亡率の高いがんのひとつで、5年生存率は10%未満とされています(世界保健機関WHOなど統計データに基づく)。
日本においても発症率・死亡率が増加傾向にあり、今後も早期発見および治療法開発が重要です。
具体的な罹患率や有病率に関しては、本治験登録ページには記載がなく、WHOや国立がん研究センターなど信頼性の高い統計情報から引用する必要があります。
免責事項
本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。治験への参加可否は必ず主治医とよくご相談ください。
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