臨床試験紹介(固形がん(DLL3陽性神経内分泌腫瘍)):タルラタマブ(Tarlatamab)(NCT06788938)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine neoplasms, NENs)は全身の多様な臓器に発生する希少かつ多様ながんで、その一部は進行性で治療選択肢が限られることが課題です。進行したNENsでは手術適応外となる場合が多く、従来の化学療法や標準治療が奏効しにくいことが少なくありません。

このような状況において、DLL3(Delta-like ligand 3)はがん細胞表面に異常発現する分子として注目されており、DLL3を標的とするタルラタマブ(bispecific T-cell engager)が、従来の治療に代わり新たな治療戦略として期待されます。

本試験は、DLL3陽性の進行NENsを対象に、タルラタマブの安全性と有効性を検証する多施設共同のバスケット試験であり、その意義は新たな治療選択肢の創出にあります。なお、治療効果や安全性は期待されますが、現時点ではまだ検証中であることにご留意ください。ResearchGateセンターワッチ

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

本試験では、タルラタマブというDLL3とT細胞のCD3を同時に認識するバイスペシフィックT細胞エンゲージャー(BiTE)を用いて、DLL3陽性のがん細胞にT細胞を誘導し、がん細胞の直接的な免疫攻撃を促す戦略です。

ステップアップ投与(Cycle 1:1 mg on Day 1 → 10 mg on Days 8 and 15)を経て、その後は2週ごとに10 mgを継続投与します。

Simonの二段階設計を採用し、Stage 1(DLL3発現≥25%、10名)で客観的反応率が低い場合は試験中止、そうでなければDLL3発現≥1%の19名を追加し、総29名の患者で有効性と安全性を評価します。ResearchGate

やさしい解説

タルラタマブは、がん細胞の表面にあるDLL3という目印と、体の中にいる免疫のT細胞をつなぐ橋のような薬です。これによって、がん細胞に免疫の攻撃が向かうよう導きます。

まず少量から段階的に投与し、体が慣れるよう配慮してから2週間に1回のペースで継続投与します。試験はまず少人数で効果を見て、一定以上の成果があれば対象を広げて評価を進める形で進行しており、効果が期待されますが、現在も慎重に検証中です。ResearchGate

患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。進行した神経内分泌腫瘍で、がん細胞の表面にDLL3というタンパクがある場合に参加が可能な可能性があります。

どんな治療なの?

この治療は、タルラタマブという1種類の薬を使います。これはDLL3という目印とT細胞のCD3を同時に捉え、免疫のT細胞がDLL3陽性のがん細胞を攻撃するよう導く薬です。

治療の流れ

  • サイクル1:まず1日目に1 mgを投与し、8日目と15日目に10 mgずつ投与します。
  • その後は2週間に1回、10 mgを投与し続けます。
  • 投与日に採血や診察、画像検査などを行い、副作用や効果を確認しながら継続します。副作用や効果の確認をしながら進められます。

どのくらい通院が必要?

基本的には2週間に1回の通院となります。初期段階では体調や副作用を注意深く見るため、やや頻繁になることがあります。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(血球数、肝臓・腎臓機能など)
  • 採血による全身状態チェック
  • CTやMRIなどの画像検査によるがんの変化確認

日常生活の注意点

治療中は体調や食欲、発熱や息切れ、強いだるさなどに気をつけ、少しでも異変を感じたら早めに医療機関に連絡しましょう。無理のない生活を心がけてください。

参加を検討する方へ

この治療はまだ研究段階のもので、すべての方に効果があるとは限りません。副作用として疲労、発熱、血液検査異常などが起こる可能性があります。参加の可否やリスク・ベネフィットについては、必ず主治医とよく相談してください。

試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称:NCT06788938/Tarlatamab in Advanced Delta-like 3 (DLL3)-Expressing Tumors Including Neuroendocrine Neoplasms
  • スポンサー情報:Jonsson Comprehensive Cancer Center(責任機関)ClinicalTrialsセンターワッチ
  • フェーズ/デザイン:Phase II/多施設共同、オープンラベル、バスケット型、Simonの二段階設計ResearchGate
  • 対象疾患とバイオマーカー条件:進行(Stage IV、Stage IIIも選択可)神経内分泌腫瘍(低・中等度NEN、Large cell NEC、SCLCへ変換型など)で、DLL3陽性(Stage 1:≥25%、Stage 2:≥1%)センターワッチResearchGate
  • 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング):Cycle 1:Day 1に1 mg、Day 8と15に10 mg;以後2週間ごとに10 mg、静脈投与。ResearchGate
  • 登録予定数と期間:Simon二段階設計で最大29名(Stage 1:10名、Stage 2追加19名)ResearchGate
  • ステータス:Active – Recruiting(2025年5月時点)センターワッチ
  • 治験参加国:公表情報なし(Jonsson Comprehensive Cancer CenterおよびUCLAを含む米国複数施設)ResearchGate
  • 出典リンク:ClinicalTrials.gov(NCT06788938)ClinicalTrials

試験進捗状況

現在、患者登録中(Active – Recruiting)で、最終更新日は2025年5月20日です。日本での参加施設に関する記載は公表情報なしです。センターワッチ

世界の疫学データ

神経内分泌腫瘍(NENs)は稀な疾患で、頻度は地域差がありますが、全悪性腫瘍のうち約0.5〜2%程度とされます。例えば米国では年間発症率が2.5〜5.8/10万人と報告される一方、日本においてはやや低い傾向があり、年6〜10/100万人程度と推定されることがあります(出典:WHOほか、一般的な疫学報告より、詳細は調査中)。なお、具体的な数値や参考文献については現時点で臨床試験情報には記載がなく、WHOおよび日本のがん統計資料からの補足が必要となります。

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。参加の可否は必ず主治医とご相談ください。

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