臨床試験紹介(転移性乳がん〈HER2発現〉):ES2B-C001(NCT06746688)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)は、乳がんの一部に過剰発現することでがんの進行や再発、転移を促進します。現在、HER2陽性乳がんに対しては抗HER2抗体や抗体薬物複合体(ADC)等が標準治療として使用されていますが、耐性の発現、効果が限定的な症例、再発のリスクは依然として残ります。今回の試験では、HER2を標的とした新しいワクチン様治療ES2B‑C001の安全性および忍容性、免疫原性を評価し、耐性克服や長期的な抗腫瘍効果の可能性を検証する意味があります。Synapse


治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的解説

ES2B‑C001は、HER2の全細胞外ドメインをウイルス様粒子(VLP)表面に高密度に提示することで、自己耐性を克服し、多クローン抗HER2抗体の産生を促す設計です。この新規がんワクチンは、抗HER2モノクローナル抗体に対する耐性がある場合でも作用する可能性があり、アジュバントとしてISA 51(Montanide)を併用することで免疫応答を増強する方向性を持ちます。現在、初回投与量および毒性評価が主目的で、安全性と免疫原性を探索的に検証する段階です。効果は引き続き検証中です。cdek.pharmacy.purdue.edu+7cdn.clinicaltrials.gov+7clinicaltrials.gov+7

やさしい解説

この治療は、がんの目印であるHER2を「見せることで」、体の免疫に「がんを敵だよ」と気づかせて攻撃させる仕組みです。ワクチン(ES2B‑C001)だけでも働きますが、Montanideという助ける薬(アジュバント)があると、もっとたくさん免疫が働きやすくなります。今はまず安全かどうか、体が悪い反応をしないかを慎重に調べる段階です。


患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。特に、乳がんでがん細胞の表面にHER2というタンパク質がある方が参加できる可能性があります。

どんな治療なの?

この治療は、がんの目印「HER2」を対象にしたワクチン(ES2B‑C001)を使います。
対象のワクチンは、HER2を体の免疫に見せやすくする工夫がされていて、さらに「Montanide」という免疫を元気にするお薬(アジュバント)を一緒に使う場合もあります。体が「がん細胞を攻撃しよう」と反応しやすくなる仕組みです。効果はまだ検証中です。

治療の流れ

  • 治療は3週間ごとに投与され、計5回を予定しています(初回含め12週間)。
  • 投与方法は軽い注射(VLPワクチン)です。
  • 初回投与後、6週程度の安全性確認期間を含めて経過を観察します。
  • 各投与時に血液検査や体調確認などを行います。Synapse+8ClinicalTrials+8AdisInsight+8ExpreS2ion Biotechnologies

どのくらい通院が必要?

基本的に3週間に1回の通院です。治療開始直後は、副作用や体調変化の確認のため通院が多くなることもあります。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(肝臓・腎臓の機能、血球数など)
  • 心臓検査(HER2治療では重要) ※心機能は主として除外基準としてLVEF67%以上が求められるなどが記載されていますClinConnect
  • CTやMRIでがんの動きを確認する画像検査も行われる可能性があります。

日常生活の注意点

治療中は体調や食欲の変化に注意し、無理をせず安静にしてください。熱、息切れ、強いだるさなどがある場合は、早めに医療機関に連絡してください。

参加を検討する方へ

この治療は研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用(注射部位反応、免疫関連症状など)が出る可能性があります。参加を希望される場合は、必ず主治医とよくご相談ください。


試験概要

試験番号(NCT)/正式名称
NCT06746688:A First‑In‑Human Phase I, Open‑Label, Dose‑Escalating Trial to Assess the Safety, Tolerability and Immunogenicity/Preliminary Antitumor Activity of ES2B‑C001 With or Without Montanide in HER2 Expressing Metastatic Breast Cancercdek.pharmacy.purdue.edu+5cdek.pharmacy.purdue.edu+5Synapse+5cdek.pharmacy.purdue.edu+8cdn.clinicaltrials.gov+8cdek.pharmacy.purdue.edu+8

スポンサー情報
ExpreS2ion Biotechnologies ApS(デンマーク)、AdaptVacとの共同開発(VLPワクチン)ClinConnect+5cdn.clinicaltrials.gov+5adisinsight.springer.com+5

フェーズ/デザイン
Phase I/オープンラベル、用量漸増、適応順次投入(アダプテッド3+3デザイン)cdn.clinicaltrials.gov+2Synapse+2

対象疾患とバイオマーカー条件
HER2陽性転移性または局所進行不能乳がん、すでに2~3ラインの抗がん薬治療を受けた患者ResearchGate+14cdn.clinicaltrials.gov+14ClinConnect+14

投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
ES2B‑C001(IM筋注)、用量:50 μg/150 μg/450 μg(アジュバント併用群)。初回投与後、3週ごとに計5回。安全性評価のため最大6週の追跡ありcdek.pharmacy.purdue.edu+8cdn.clinicaltrials.gov+8cdek.pharmacy.purdue.edu+8

登録予定数と期間
登録予定27名。試験開始:2025年6月3日、主要評価完了:2026年3月31日、試験終了予定:2026年3月31日cdek.pharmacy.purdue.edu

ステータス
現在募集中(RECRUITING)cdek.pharmacy.purdue.edusigma.larvol.com

治験参加国と日本の参加有無
欧州(オーストリア)で実施。日本での施設参加は公表情報なしuab.edu

出典リンク
ClinicalTrials.gov 試験ページおよびプロトコル文書ResearchGate


試験進捗状況

  • 登録状況:現在募集中であり、最終更新は2025年8月22日時点で確認されています。ClinConnect
  • 日本の参加有無:日本での施設情報は公表されておらず、参加不可と見なされます(公表情報なし)。ExpreS2ion BiotechnologiesLarvol Sigma

世界の疫学データ

HER2陽性乳がんは、乳がん全体の約20‑25%を占めるとされています。その中で転移性となる場合、標準治療終了後に耐性や再発の問題が生じることが多く、治療選択肢の拡充が求められています。具体的な罹患率/有病率については、GLOBOCANやWHOなどの公的データを参照することが望ましいですが、本試験の一次情報に記載がないため、今回は省略といたします。ExpreS2ion BiotechnologiesClinicalTrials


免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、治療の効果や安全性を保証するものではありません。参加の可否やリスク・ベネフィットの判断は、必ず主治医とご相談ください。

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