臨床試験紹介(三重陰性乳がん):Pembrolizumab(NCT06606730)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

三重陰性乳がん(TNBC:Triple Negative Breast Cancer)は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2がいずれも陰性であり、治療選択肢が限られ、再発リスクが高いという課題があります。

現在は、術前に化学療法と免疫チェックポイント阻害剤(Pembrolizumab)を組み合わせて行うネオアジュバント治療が広く採用されており、術後にも免疫療法を継続する方法が標準的です。

しかし、術前治療で病理学的完全寛解(pCR)を得た患者に対し、術後にさらにPembrolizumabを継続する必要性には疑問が残ります。本試験は、その無益な治療を減らせる可能性を検証する意義ある研究です。CDEK欧州臨床試験情報ネットワーク

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

本試験は、術前に化学療法とPembrolizumabによる治療を受け、pCRを達成したTNBCの患者を対象に、術後にPembrolizumabの継続を行う群と中止して経過観察する群とを比較する非劣性ランダム化第III相試験です。

標準的には術後6ヶ月まで免疫療法を継続しますが、pCRを得た患者ではその継続が再発抑制に必ずしも寄与しない可能性があり、治療の脱重化(デエスカレーション)として検証が進められています。CDEKAccessTrial

やさしい解説

この試験では、術前に薬と免疫治療でがんが見えなくなった方が対象です。手術後、免疫治療をあと6ヶ月続けるグループと、治療をやめて普通のフォローだけで経過をみるグループに分けて、再発を防ぐ効果に違いがないかを比べます。治療の負担を減らせる可能性を調べる研究です。CDEK欧州臨床試験情報ネットワーク

患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。特に、乳がんや大腸がんなどで、がん細胞の表面に「HER2」というタンパク質が少しでもある、またはその遺伝子に変化(変異)がある場合に参加できる可能性があります。
(※本試験はTNBCでありHER2陰性が条件です。「HER2のある場合」は当てはまりません。)

どんな治療なの?

この治療は、1種類の薬(Pembrolizumab)を使います。

Pembrolizumab
免疫細胞(T細胞)の「ブレーキ」を外す薬です。がんが免疫から逃げようとする信号を止めることで、免疫細胞ががんを攻撃しやすくします。治療は術前と術後に行われますが、本試験では術前に効き目があった方を対象に、術後の継続が必要かどうかを検証します。

治療の流れ

  • 術前に最低6コースの化学療法とPembrolizumabを併用。
  • 手術後、pCR(がんが見つからない状態)を達成した方を対象に、無作為に2群に分かれます:
    • 対照群:術後6ヶ月間、Pembrolizumabを継続。
    • デエスカレーション群:治療を行わず、定期的にフォローアップ。
  • その後、4年にわたって経過観察が行われます。CDEKAccessTrial

どのくらい通院が必要?

情報が公表されている限りでは、詳細な通院頻度の記載はありません(公表情報なし)。

どんな検査があるの?

公表情報によると具体的な検査内容は記載されていません(公表情報なし)。

日常生活の注意点

治療中は体調の変化に気をつけ、無理のない生活を心がけましょう。症状や副作用の報告については主治医とご相談ください。

参加を検討する方へ

この治療はまだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。免疫治療には副作用の可能性があります。参加の可否やメリット・リスクは、必ず主治医とご相談ください。

試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称
    NCT06606730/OPTimizing Adjuvant Prescription of PEMBROlizumab in Patients With Early-stage Triple-negative Breast Cancer Achieving Pathologic Complete Response After Standard Neoadjuvant Chemotherapy and Pembrolizumab(略称:OPT-PEMBRO)CDEK
  • スポンサー情報
    UNICANCER(EORTC関連)CDEK欧州臨床試験情報ネットワーク
  • フェーズ/デザイン
    第III相/非劣性、無作為化(1:1)、オープンラベル、国際共同試験CDEKctv.veeva.com
  • 対象疾患とバイオマーカー条件
    早期TNBC(ERおよびPR ≤10%、HER2陰性)、pCR達成者CDEKctv.veeva.com
  • 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
    射前化学療法+Pembrolizumab(最低6コース)後、pCR達成者にランダム割り付け。対照群:術後Pembrolizumabを6ヶ月間継続/デエスカレーション群:フォローアップのみ。投与経路は静脈注射(IV)と想定されます(公表情報なし)CDEK欧州臨床試験情報ネットワーク
  • 登録予定数と期間
    登録予定 2,454名。2025年7月1日開始、一次結果の主要評価(プライマリースタディ完了)予定は 2033年1月1日、試験全体完了は 2039年6月1日。CDEK
  • ステータス
    現時点では「募集前」(Not yet recruiting)CDEKctv.veeva.com
  • 治験参加国
    フランス、ベルギーなど国際共同(複数の欧州国)欧州臨床試験情報ネットワークCDEK
  • 出典リンク
    ClinicalTrials.gov 該当ページCDEK

試験進捗状況

  • 登録状況:未開始(Not yet recruiting)CDEKctv.veeva.com
  • 最終更新日:欧州情報サイトでは2025年8月28日更新あり。AccessTrial
  • 日本の参加有無:「公表情報なし」— 複数国の記載ありましたが、日本での施設参加情報は確認できませんでした。

世界の疫学データ

本試験対象のTNBCの世界および日本における罹患率/有病率に関する記載はClinicalTrials.govにはありませんでした(公表情報なし)。必要であればWHOや国際がん研究機関(IARC)などのデータをご案内可能です。

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。参加可否は必ず主治医とご相談ください。

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