臨床試験紹介(乳がんの二次療法):サシツズマブ・チルモテカン(サックTMT)+ペムブロリズマブ(NCT06312176)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

ホルモン受容体陽性かつHER2陰性(HR+/HER2–)の進行または転移乳がん患者さんの治療には、まず内分泌療法(ET)とCDK4/6阻害薬の併用が標準ですが、多くの患者さんで耐性が生じ、効果が得られにくくなる課題があります。そのような状況下では化学療法が選択されますが、効果や副作用のバランスに課題があります。

本試験は、抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ・チルモテカン(以下「サックTMT」)単剤およびペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬)併用療法を、医師の裁量による治療(TPOC)と比較することで、有効性向上の可能性を探る意義があります。検証中である旨に留意が必要です。Cancer Networkセンターウォッチ

治療の位置づけ

専門的な解説

サックTMTは、TROP2に結合する抗体に細胞毒性薬(belotecan派生物)を結合させたADCで、がん細胞への薬剤運搬と細胞死誘導を狙った構造です。

ペムブロリズマブ併用は、免疫チェックポイント阻害による免疫反応活性化を補い、より強固ながん抑制を期待する戦略です。

本試験は3群(サックTMT単剤/サックTMT+ペムブロリズマブ/TPOC)のランダム化第III相で、PFS(無増悪生存期間)を主要評価項目としています。Cancer Networkケアアクロス

やさしい解説

難治性となった乳がんに対しては、新しい標的に働く薬(サックTMT)が使われています。さらに、がんへの攻撃を免疫の力でもサポートする薬(ペムブロリズマブ)を加えることで、治療効果が上がる可能性を調べています。ただし、どれが一番よいかはまだ評価中です。

患者さん向け解説

どんな治療なの?

この治療は、2種類の薬を使います。

サシツズマブ・チルモテカン(サックTMT)
TROP2というがん細胞の表面に多く存在する目印にくっつく薬で、がん細胞の中に細胞を壊す力を持つ薬を運び込むことで、がんを攻撃します。

ペムブロリズマブ
がんからの「免疫細胞による攻撃をやめて」という信号を邪魔する薬で、免疫自体ががんを攻撃しやすくなるように働きます。

治療の流れ

  • 2週間ごとに、サックTMTの静脈注射(IV)を受けます。
  • その中の一部の患者さんには、6週間ごとのペムブロリズマブの静脈注射も併用されます。
  • 通常はこれらの治療を、病状の進行や副作用がないかを確認しながら継続します。なお効果や副作用はまだ検証段階のため、医師の指導を仰いでください。

どのくらい通院が必要?

基本的には2週間に1回の通院が想定されます。ペムブロリズマブを併用する方は、6週に1回の投与が加わります。通院回数や頻度は状況により変わりますので、主治医にご相談ください。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(肝腎機能、血球など)
  • 画像検査(CTなど)で腫瘍の状態確認
  • 心電図や心機能検査が必要かどうかは、不明(公表情報なし)

日常生活の注意点

体調の変化(熱、倦怠感、呼吸困難など)に注意し、異常を感じたら早めに医療機関に連絡してください。無理せず、日常生活は医師と相談しながら調整しましょう。

参加を検討する方へ

本治療法はまだ研究段階であり、全員に効果があるとは限りません。副作用には、倦怠感、吐き気、血球数の減少などが出現する可能性があります。参加の可否やリスク・利益については、必ず主治医とご相談のうえ、ご検討ください。

試験概要

  • 試験番号(NCT): NCT06312176 / 正式名称:MK-2870-010 TroFuse-010 study: サックTMT単独またはペムブロリズマブ併用 vs 医師選択治療(HR+/HER2–進行または転移乳がん)UChicago Medicineケアアクロス
  • スポンサー情報:Merck Sharp & Dohme LLC(MSD)センターウォッチ
  • フェーズ/デザイン:第III相/ランダム化・オープンラベル・3群比較、パラレルアサインメントケアアクロスセンターウォッチ
  • 対象疾患とバイオマーカー条件:HR+/HER2–再発または転移乳がん、内分泌療法+CDK4/6阻害薬で進行した症例対象UChicago MedicineCancer Network
  • 投与プロトコール:サックTMT 4 mg/kg IV 2週ごと、サックTMT+ペムブロリズマブ 400 mg IV 6週ごと、または医師選択化学療法(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、リポソームドキソルビシン)Cancer Networkケアアクロス
  • 登録予定数と期間:総登録予定約1200名、開始:2024年4月14日、予想完了:2031年4月12日センターウォッチ
  • ステータス:募集中(Active, Recruiting)センターウォッチ
  • 治験参加国:米国、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、ハンガリー、インド、アイルランドなど多数。日本は含まれておらず、明記された施設情報も「公表情報なし」と判断します。センターウォッチ
  • 出典リンク:ClinicalTrials.gov(NCT06312176)

試験進捗状況

  • 登録状況:現在参加募集中(Active – Recruiting)で、最新更新は2025年8月14日。センターウォッチ
  • 日本の参加:公表情報なし

世界の疫学データ

本試験で対象となるHR+/HER2−進行または転移乳がんの世界および日本における罹患率・有病率については、ClinicalTrials.govには記載がありません。現時点では信頼できる公開情報がなく、「公表情報なし」とさせていただきます。

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。治験への参加可否は必ず主治医とご相談ください。

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