臨床試験紹介(非小細胞肺がん〈KRAS G12C 変異型〉):Olomorasib(LY3537982)+ペンブロリズマブ(抗PD-1治療)/標準治療併用(NCT06119581)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

非小細胞肺がん(NSCLC)は肺がんの主要なタイプで、進行あるいは転移性のものでは手術や放射線で根治を狙うのが難しいことがあります。近年、がん細胞に特定の遺伝子変異(例:EGFR, ALK, KRAS 等)がある患者を対象とした分子標的治療や免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1/抗PD-L1)が標準治療になってきました。中でも KRAS G12C という変異を持つがんは、KRAS を直接抑制する薬(KRAS G12C 阻害剤)が近年開発され、有望な結果を示してきています。しかし、免疫療法だけ、または化学療法併用だけでは十分な効果が得られないことも多く、耐性や再発、がんの進行などの問題があります。

この試験(SUNRAY-01)は、KRAS G12C変異をもつ進行または転移性の NSCLC 患者において、新しい KRAS G12C 阻害薬である Olomorasib(LY3537982) を、現在の標準治療(免疫療法+/−化学療法)に加えることが、標準治療単独よりも有効かどうかを検証することを目的としています。

この治療戦略がうまくいけば、第一選択治療の成績改善が期待されます。なお、効果・安全性についてはまだ検証中です。臨床試験情報サイト+5臨床試験情報サイト+5lillyoncologypipeline.com+5


治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

この試験では、進行または転移性 NSCLC、かつ KRAS G12C 変異を有する患者を対象に、第一選択治療として Olomorasib(LY3537982) を、免疫チェックポイント阻害薬である ペンブロリズマブ(Pembrolizumab) と併用し、さらに必要に応じて化学療法(ペメトレキセド+プラチナ製剤)を加える部位(Part B)も設定しています。

試験は Phase III で、無作為化比較試験や安全性確認の先行投入部位 (Safety Lead-In)、および用量最適化部位を含んでおり、PD-L1 発現の高低によりサブグループ(PD-L1 ≥50% 部分と、PD-L1 発現に関わらず化学療法併用を含む部)を分けて比較されます。

投与経路は Olomorasib は経口、ペンブロリズマブと化学療法は静脈内。試験開始時期は 2023年12月で、終了予定は 2026年10月。uchicagomedicine.org+4臨床試験情報サイト+4lillyoncologypipeline.com+4

やさしい解説

簡単にいうと、この研究では、「Olomorasib」という新しい飲み薬を免疫治療(ペンブロリズマブ)にプラスして使うことで、がんを抑える力が標準治療よりも強いかどうかを確かめるものです。

さらに、がんの種類や “PD-L1” という目印が高いか低いかによって、化学療法を併用するかどうかも調べます。

治療は体に負担の少ない飲み薬と、必要な点滴治療を組み合わせる形式で、安全性や副作用も含めて調べる試験です。現在も研究中で、安全性やどのくらい効果があるかはまだ確定していません。lillyoncologypipeline.com+2uchicagomedicine.org+2


患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。特に、非小細胞肺がんで、がん細胞の遺伝子に KRAS G12C という変化がある方が対象になります。


どんな治療なの?

この治療では、 Olomorasib(LY3537982) という KRAS G12C 変異を持つがん細胞を狙う新しい薬を使います。この薬はがん細胞内でその変異が作る異常な活動を抑えるように設計されています。そして、ペンブロリズマブ(抗PD-1 抗体) という、がんが免疫から逃げるのを防ぐ薬を併用します。場合によっては、さらに化学療法(ペメトレキセド+プラチナ薬)を加えることで、より強くがんを抑えようとする組み合わせ治療です。効果と安全性は今も検証中です。lillyoncologypipeline.com+2lillyoncologypipeline.com+2


治療の流れ

  • 最初に 用量最適化部位(Dose Optimization)Part A があり、ここでは主に Olomorasib+ペンブロリズマブを使った治療が中心です。臨床試験情報サイト+1
  • Part B では、Olomorasib+ペンブロリズマブ+化学療法の組み合わせが比較対象として使われます。lillyoncologypipeline.com+1
  • 投与は経口(Olomorasib)および静脈注射(ペンブロリズマブと化学療法)です。lillyoncologypipeline.com+1
  • 治療周期や具体的な投与間隔など、詳細のサイクル数や期間は公表情報では完全には明らかではありません。lillyoncologypipeline.com+1

どのくらい通院が必要?


どんな検査があるの?


日常生活の注意点

  • 副作用が出る可能性があります。免疫療法や化学療法に共通する副作用(疲れやすさ、吐き気、感染症リスクなど)が考えられます。Olomorasib 自体の安全性も検証中です。
  • 定期的な検査や通院、点滴治療があるため、体調が悪い時や症状(発熱、強い倦怠感、呼吸困難など)が出たときにはすぐ医療機関に連絡してください。
  • ライフスタイル調整(食事・睡眠)や休養が重要です。水分補給、体を清潔に保つことなども助けになります。

参加を検討する方へ

この治験はまだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。未知の副作用が出る可能性もあります。リスクとベネフィットを十分に考慮し、主治医とよく相談してください。


試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称
    NCT06119581 / SUNRAY-01, A Global Pivotal Study in Participants With KRAS G12C-Mutant, Locally Advanced or Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer Comparing First-Line Treatment of LY3537982 and Pembrolizumab With or Without Chemotherapy in Patients With Advanced NSCLC. lillyoncologypipeline.com+2臨床試験情報サイト+2
  • スポンサー情報
    Eli Lilly and Company 臨床試験情報サイト+1
  • フェーズ/デザイン
    Phase 3, 無作為化比較試験あり(Part A, Part B)、および安全性確認の先行投入部位(Safety Lead-In)、用量最適化部位も含む。臨床試験情報サイト+2lillyoncologypipeline.com+2
  • 対象疾患とバイオマーカー条件
    非小細胞肺がん(Locally advanced III B-C または転移性 IV)、KRAS G12C 変異を持つもの。PD-L1 発現については、Part A では ≥50%、Part B では発現率に関わらず 0-100%。組織型に制限あり(Part B・安全性 lead In の場合は非扁平上皮型が主であることなど)lillyoncologypipeline.com+2uchicagomedicine.org+2
  • 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
    Olomorasib は経口、ペンブロリズマブおよび化学療法(ペメトレキセド+プラチナ製剤)は静脈内。具体的な投与間隔(たとえば何週間ごとか等)は公表情報では完全には明記されていません。lillyoncologypipeline.com+1
  • 登録予定数と期間
    開始予定:2023年12月。終了予定:2026年10月。登録数は公表で明確な数字が確認できません。fdaaa.trialstracker.net+2lillyoncologypipeline.com+2
  • ステータス
    現在「リクルート中(Recruiting)」。lillyoncologypipeline.com+2臨床試験情報サイト+2
  • 治験参加国
    グローバル試験。日本の参加施設あり。少なくとも静岡県 Nagaizumi-cho, Sunto-gun に Shizuoka Cancer Center がリストされている。臨床試験情報サイト
  • 出典リンク
    ClinicalTrials.gov のページ: NCT06119581 臨床試験情報サイト+1

試験進捗状況

  • 登録状況: Recruiting(参加者募集中)fdaaa.trialstracker.net+1
  • 最終更新日:ClinicalTrials.gov 上の最終更新 “Last Update Posted” は 2025-08-(正確な日付は 2025年8月)臨床試験情報サイト+1
  • 日本の参加有無:あり。少なくとも静岡県、Nagaizumi-cho, Sunto-gun の Shizuoka Cancer Center(静岡県がんセンター)などの日本施設が参加施設としてリストされています。臨床試験情報サイト

世界の疫学データ

非小細胞肺がん(NSCLC)の KRAS G12C 変異型 の割合や肺がん全体の罹患率、有病率について日本および世界のデータ(補助情報):

  • 世界全体で肺がんは発がん率・死亡率ともにがんの中でも主要な疾患であり、WHO によれば毎年何百万人が新たに診断されているがんのひとつです。
  • KRAS 変異(特に G12C を含む)は、NSCLC 患者の約 10-15%(西洋人集団ではやや高く、アジア人集団ではやや低い)に見られるとの報告があります。 (ただし、集団や使用する解析法によって差があります。)
  • 日本における肺がん罹患率は、国立がん研究センターの統計で、新規罹患数・生存率ともに増加傾向にあります。KRAS G12C の頻度に関する具体的データは限られています。

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、治療の効果や安全性を保証するものではありません。参加の可否やリスク・ベネフィットについては、必ず主治医とご相談ください。

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