臨床試験紹介(急性骨髄性白血病(FLT3変異あり)の再発・難治性):SKLB1028 対 Salvage Chemotherapy(NCT04716114)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia;AML)は、骨髄中で未成熟な白血球前駆細胞が異常に増殖し、正常な血球形成が阻害される血液のがんです。特に FLT3(FMS-like tyrosine kinase 3)遺伝子変異を持つAMLは、初回治療での寛解率は得られても、再発率が高く、生存期間が短いという悪い予後因子として知られています。

現行の治療では、標準誘導化学療法+FLT3阻害薬の併用、あるいは再発・難治性(R/R)例でのサルベージ化学療法が用いられますが、有効性と安全性のバランスに課題があります。副作用や耐性の問題、特に高齢者や体力の低い患者では化学療法の実施が難しいこともあります。

この試験(NCT04716114)は、再発・難治性の FLT3変異AML 患者を対象に、新規薬物 SKLB1028 の効果と安全性を、従来のサルベージ化学療法と比較することで、より良い治療選択肢を提供できるかを検証することを目的としています。


治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

SKLB1028 は、FLT3 遺伝子変異を持つAMLに対する新規治療薬です。具体的には、再発または難治性のAMLで、FLT3変異陽性の患者を対象に、サルベージ化学療法と比較してSKLB1028 の寛解率および生存期間の改善が期待されています。

試験は第III 相(Phase III)ランダム化、オープンラベルであり、患者を 2:1 の割合で SKLB1028 群と化学療法群に振り分け、SKLB1028 の優越性または少なくとも非劣性を確認することを目的としています。

併用療法というよりは、新薬単独または標準化学療法との比較です。

やさしい解説

この治験では、AML(急性骨髄性白血病)で FLT3 という遺伝子の変異がある人に、新しい薬 SKLB1028 を使ってみて、従来の化学療法と比べてどれだけ良くなるかを調べています。

今までの治療では FLT3 遺伝子変異がある患者では再発しやすく、治療が難しいことが多かったため、この薬がそのような人に対して役立つ可能性があります。ただし、まだ検証中です。


患者さん向け解説

再発または難治性 FLT3変異AML患者を対象に、SKLB1028と従来のサルベージ化学療法を比較する第III相試験(NCT04716114)の目的・対象・意義をまとめました。

どんな治療なの?

この治療は、SKLB1028 という薬を、再発・難治性の FLT3変異陽性 AML 患者さんに投与し、従来のサルベージ化学療法(標準的な救済化学療法:salvage chemotherapy)と比較するものです。SALvage chemotherapy は過去の治療が効かなくなった患者さんに使われる「再起治療」のことです。SKLB1028 の特徴や副作用はまだ研究中です。

治療の流れ

  • 最初にスクリーニング期間があり(最大約14日間)、参加条件が整っているかを確認します。 ClinicalTrials
  • 参加者はランダムに、SKLB1028 を投与する群または 従来のサルベージ化学療法を受ける群のいずれかに割り振られます(2:1 の割合で SKLB1028 群が多め)。 ClinicalTrials
  • 投与経路、投与間隔などの詳細は公表情報において明確な投与スケジュール記載なし。 ClinicalTrials
  • 定期的な診察、血液検査、骨髄検査などで治療効果と副作用をモニタリングします。公表情報において画像検査の頻度などは明記されていません。 ClinicalTrials

どのくらい通院が必要?

現時点で公表されている情報に、投与サイクルの頻度や複数回の通院スケジュールの詳細は記載されていません。治療中は状態を見ながら通院回数が決まることが予想されます。定期的な検査・モニタリングがありますので、少なくとも月に一度以上の通院が必要になる可能性があります。公表情報なし。 ClinicalTrials

どんな検査があるの?

日常生活の注意点

この治験は実験段階であり、予想外の副作用が出る可能性があります。体調が変わったとき(発熱、感染症の兆候、出血、倦怠感など)はすぐに医師に報告してください。化学療法群を選択した場合の副作用(吐き気、脱毛、感染リスク上昇など)があることを理解しておく必要があります。薬については SKLB1028 の副作用情報は限定的であり、まだ明らかになっていない点が多いため、慎重なモニタリングが行われます。

参加を検討する方へ

この治験は、これまでの治療で十分な効果が得られなかった方への新しい選択肢になる可能性がありますが、すべての人に有効であるとは限りません。副作用が出る可能性があり、病気の進行や人による耐性の有無、他の健康状態によって結果が異なります。参加を決める前には、主治医と治験のメリットとリスクをよく話し合ってください。


試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称
    NCT04716114/“A Study of SKLB1028 Versus Salvage Chemotherapy in Patients With Relapsed or Refractory (R/R) AML With FLT3-Mutated” ClinicalTrials+1
  • スポンサー情報
    CSPC ZhongQi Pharmaceutical Technology Co., Ltd.(中国) センターウォッチ+1
  • フェーズ/デザイン
    第III相/多施設/ランダム化/オープンラベル比較試験 センターウォッチ+1
  • 対象疾患とバイオマーカー条件
    再発または難治性(relapsed or refractory;R/R)の急性骨髄性白血病(AML)、FLT3変異陽性が条件。 センターウォッチ
  • 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
    SKLB1028 投与または従来のサルベージ化学療法を比較。スクリーニング期間は最大約14日間。投与スケジュール等の具体的な日程(例:何週ごと、何mgなど)は公表情報なし。 ClinicalTrials+1
  • 登録予定数と期間
    登録予定数は明記なし。他の報道によれば、“Active – Recruiting” 状態で、試験期間が 2021年10月31日~2025年11月30日程度とされている 高齢者腫瘍学+2サイエンスダイレクト+2
  • ステータス
    Active, recruiting(活動中・募集中) センターウォッチ+1
  • 臨床試験参加国
    中国が主な国。また、多施設試験とされているが、他国参加の記載は公表情報では明確ではない。 センターウォッチ+1
  • 出典リンク
    ClinicalTrials.gov のページ(NCT04716114) ClinicalTrials

試験進捗状況


世界の疫学データ

FLT3変異陽性 AML の疫学を示します。

  • 世界:AML の中で FLT3 遺伝子変異を持つ例は、全体の約 25〜30% とされています。ITD(Internal Tandem Duplication)や TKD(Tyrosine Kinase Domain)変異など種類があります。 ハエマトロジカ+1
  • 日本:日本でも AML 患者の中で FLT3 変異陽性率はこの範囲と大きく変わらず、約 20〜30% 程度という報告があります(特定のコホートによる)。ただし全国統計での正確な値は限定的です。補足:国内のデータとして、日本血液学会や主要施設による報告でこのような割合が確認されています。

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、SKLB1028 の効果や安全性を保証するものではありません。参加可否や治験の適用は必ず主治医とご相談ください。

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