はじめに(疾患背景と現行治療の課題)
膵管腺癌(膵臓がんの主要なタイプ)は非常に進行が速く、転移がんでは全体的な予後が極めて厳しい状況にあります。一次治療として、Gemcitabine+nab-PaclitaxelやFOLFIRINOXが用いられることが一般的ですが、副作用が強かったり、効果が持続しにくいことが大きな課題です。
本試験では、STAT3シグナル伝達経路を標的とする小分子薬 Napabucasin(GB-201) を用いることで、がん細胞の“stemness”や治療抵抗性の克服を試みる新たなアプローチとして意義があります OncotargetCDEK。
治療の位置づけ(+やさしい解説)
専門的な説明
本試験で使用される GB-201(Napabucasin) は、STAT3と呼ばれる転写因子の活性を阻害する小分子薬です。
この分子はがん細胞の“stemness”(いわゆるがん幹細胞様の性質)を維持し、治療抵抗性の原因となることがあります。
GB-201をPaclitaxelおよびGemcitabine(低用量)と併用することで、がん細胞の再生能力を抑制しつつ、既存の化学療法による細胞死を促進し、全生存期間(OS)の延長が期待されます。
ただし、現時点では効果は「検証中」です OncotargetCDEK。
やさしい表現
この治療は、がんが自分で成長する力を失わせる新しい薬(GB-201)と、いままで使ってきた抗がん剤(パクリタキセルと低用量ゲムシタビン)を組み合わせる方法です。がんの悪さの根っこをダメにしつつ、治療効果を高める狙いがあります。ただし、まだ試験中で“確実な効果がある”とは言えません。
患者さん向け解説
この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。特に、膵臓がんで一次治療後にがんが進行した方に参加の可能性があります。
どんな治療なの?
この治療は、3種類の薬を組み合わせて使います。
GB-201(ナパブカシン)
STAT3というがん細胞の成長や再生に関わるタンパクを止める薬です。
これにより、がん細胞が弱くなり、治療に効きやすくなる可能性があります。
Paclitaxel(パクリタキセル)
がん細胞の分裂を止める抗がん剤です。
Gemcitabine(低用量ゲムシタビン)
こちらもがんが増えるのを阻害する抗がん剤で、低用量に抑えられています。
治療の流れ
- GB-201 は経口(2回/日)、1回はもう1回の間隔を8~12時間あけて服用し、まず Paclitaxel+Gemcitabine 投与の2〜5日前から開始します。
- Paclitaxel(80 mg/m²) と Gemcitabine(600 mg/m²) は、1サイクル28日間のうち、1、8、15日目に点滴で投与されます。
- サイクルごとに、血液検査や診察を行い、副作用や治療効果を確認しながら進めます CDEK。
どのくらい通院が必要?
基本的には 4週間に1回のサイクル を繰り返します。ただし、薬の副作用や体調変化に応じて、通院回数が多くなる可能性があります。
どんな検査があるの?
- 血液検査:白血球・血小板・肝/腎機能など
- その他、がんの進行状況や全身状態を確認するための画像検査(病状に応じて追加される可能性があります)
日常生活の注意点
体調の変化には敏感になり、無理のない日常生活を心がけてください。体のだるさや発熱、息切れなど気になる症状があれば、すぐに医療機関へ相談しましょう。
参加を検討する方へ
この治療はまだ研究段階です。すべての方に効果があるとは限らないうえ、副作用が出る可能性もあります(例:吐き気、倦怠感、血球減少など)。治療に関する意思決定は、必ず主治医と十分にご相談のうえ行ってください。
試験概要
- 試験番号(NCT)/正式名称
- NCT03721744 /A Phase II/III Randomized, Open-Label Clinical Study of GB201 in Combination with Weekly Paclitaxel and Low-dose Gemcitabine in Patients With Metastatic Pancreatic Cancer Following Chemotherapy Failure CDEK
- スポンサー情報
- 1Globe Biomedical Co., Ltd. CDEK
- フェーズ/デザイン
- Phase II/III, ランダム化, オープンラベル, 並行群間比較 CDEK
- 対象疾患とバイオマーカー条件
- 転移性膵管腺癌, バイオマーカー条件の記載なし(公表情報なし) CDEK
- 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
- GB-201:経口、1日2回(8〜12時間間隔)、Paclitaxel+Gemcitabine投与の2〜5日前から開始
- Paclitaxel:80 mg/m²、点滴、1、8、15日目に投与(28日サイクル)
- Gemcitabine:600 mg/m²、点滴、Paclitaxel投与後に同日投与 CDEK
- 登録予定数と期間
- 予定患者数:336名
- 試験開始:2018年10月25日(実績)
- 主要評価項目完了:2025年3月31日(推定)
- 試験完了予定:2025年9月30日(推定) CDEK
- ステータス
- Recruiting(募集中) CDEK
- 治験参加国
- 国名の記載なし → 公表情報なし
- 出典リンク
- ClinicalTrials.gov 試験ページ(NCT03721744) CDEK
試験進捗状況
- 登録状況:募集中(Recruiting)となっており、患者募集が継続されています CDEK
- 最終更新日:2024年4月3日が最終更新日です CDEK
- 日本の参加有無:施設情報や国別参加状況の記載なし → 公表情報なし
世界の疫学データ
膵管腺癌は予後不良の代表的ながんで、膵臓がん全体の約90%を占めます PMC。 例えば、欧米では診断後の生存率が非常に低く、膵臓がんは主要ながん関連死因の上位を占めています PMC。日本国内の具体的な罹患率や死亡率等は、本試験情報には含まれておらず、別途厚生労働省や日本キャンサーサバイバなどの情報源での確認が必要です 。
免責事項
本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。治験への参加可否や判断に関しては、必ず主治医と改めてご相談ください。
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