臨床試験紹介(乳がんの一次療法):FWD1802+パルボシクリブ(NCT06064812)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

エストロゲン受容体陽性(ER+)かつHER2陰性(HER2–)の進行・転移性乳がんは、日本でも多くを占めるサブタイプであり、ホルモン療法やCDK4/6阻害薬などが標準治療として用いられています。しかし、治療が進行すると耐性が生じやすく、効果が持続しにくいことが大きな課題として挙げられます。本臨床試験は、FWD1802という新しい薬剤の単独投与および既存薬であるパルボシクリブ併用の安全性と初期的有効性を探索するフェーズⅠ試験です。新たな治療選択肢としての可能性を検証することが本試験の意義となります。治療効果は現時点では検証中であり、すべての患者さんに効果が期待できるわけではありません。

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的解説

FWD1802は、エストロゲン受容体(ER)に作用する新規阻害剤として開発されました。本試験では、まず単独投与による安全性と最大耐量(MTD)を決定することを目指します(Part A)。続いて、パルボシクリブとの併用による効果や安全性を評価する(Part B)、さらにESR1変異陽性患者に対象を限定した用量拡大試験を実施する(Part C)ことで、推奨される第II相用量(RP2D)の決定を検討します。安全性、忍容性、薬物動態(PK)、前兆効果を評価しながら進行させるデザインです。効果についてはまだ検証中です。

やさしい解説

FWD1802は乳がんに関わる体の“目印”(エストロゲン受容体)に働きかける新しいお薬です。まず、FWD1802だけを使って体にどれくらい安全かを探ります(Part A)。次に、既に使われているお薬(パルボシクリブ)と組み合わせてみて、安全性や有効性を調べます(Part B)。最後に、特に遺伝子に変化(ESR1変異)がある人を対象に広げて、どの量がよいかを探ります(Part C)。治療効果は現在、きちんと調べているところです。

患者さん向け解説

この治療は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。特に、乳がんや大腸がんなどで、がん細胞の表面に「HER2」というタンパク質が少しでもある、またはその遺伝子に変化(変異)がある場合に参加できる可能性があります。

どんな治療なの?

この治療は、1種類(FWD1802)の薬を使う場合と、すでに使われているパルボシクリブという薬と組み合わせて使う場合があります。

  • FWD1802
    エストロゲン受容体に作用する新しい経口薬(錠剤)で、がん細胞へのシグナルを遮断することで増殖を抑える可能性があります。効果は検証中です。
  • パルボシクリブ
    現在使われている治療薬で、21日連続服用・7日休薬のサイクルを基本としています。

治療の流れ

  • Part A(単独投与):まずFWD1802だけを少量から投与し、安全性を確認しながら段階的に用量を増やします。
  • Part B(併用投与):FWD1802に加えてパルボシクリブを定められた用量で併用して、安全性や体内動態などを確認します。
  • Part C(用量拡大):ESR1変異陽性の患者さんを対象に、FWD1802単独の用量を限られた人数(最大30人/用量レベル)で検証します。

どのくらい通院が必要?

投薬日を中心に通院が必要です。新しい治療の安全性を確認するため、初期には特に体調や副作用を確認するために通院がやや多くなる可能性があります。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(安全性:血球、肝・腎機能など)
  • 薬物動態の確認のための血液採取
  • 必要に応じてがんの評価(画像検査など)

日常生活の注意点

体調や食欲、皮膚状態の変化などに注意し、異変があればすぐに医療機関に連絡してください。安静を保ち、無理のない生活を心がけましょう。

参加を検討する方へ

この治験はまだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用としては血球減少、倦怠感、吐き気などが出る可能性があります。参加をご検討の際は、主治医とよく相談してください。

試験概要

試験進捗状況

現在、試験は「募集中」であり、引き続き参加者の登録を行っています。最新の更新日はClinicalTrials.govに基づく公表情報には明記されていません。また、日本国内での参加施設に関する記載はありませんので、「公表情報なし」と記載いたします。

世界の疫学データ

ER陽性/HER2陰性の乳がんは、世界および日本で最も多いサブタイプの乳がんです。例えば、日本乳癌学会によれば、日本の全乳がん中約70%がER陽性/HER2陰性に分類されるとされています(信頼できる疫学資料を参照)。しかし本試験のClinicalTrials.govページには罹患率/有病率に関する情報がありませんので、 WHOや日本の公的統計情報に基づく正確な数値を確認する必要があります。

免責事項

本文章は臨床試験の情報提供を目的としており、薬剤の効果や安全性を保証するものではありません。治験の参加可否については、必ず主治医とご相談ください。

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