臨床試験紹介(胃がんのメトクロノス予防):低用量アスピリン投与試験(NCT04214990)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

胃がんは世界中で発生頻度・死亡率ともに高く、日本や韓国など東アジアでは特に多く見られています(罹患率・予後改善の必要性あり)。早期胃がんは内視鏡的切除(endoscopic resection, ESDなど)で治療が可能なことが多く、再発や「別の場所に新たにがんができる(metachronous gastric cancer)」リスクが一定あります。

現在、Helicobacter pylori(ピロリ菌)感染の除菌はこの再発・発生リスクを下げる手段とされていますが、それだけでは完全ではなく、術後や切除後に新しい胃がんが発生するケースが一定数あります。

この試験(NCT04214990)は、早期胃がんまたは高異型度腺腫(high-grade adenoma)を内視鏡で切除した後、低用量アスピリン(100 mg/日)を使うことで、metachronous gastric cancer の発生を何%か抑制できるかを検証することを目的としています。

もし有効であれば、手術や内視鏡切除後の再発予防または新規発がん予防として、比較的安価で広く使える薬剤を加える選択肢になる可能性があります。


治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

この試験では、低用量アスピリン(100 mg/日、経口投与) を早期胃がんまたは高異型腺腫を内視鏡切除した患者に対してプラセボ対照二重盲検方式で投与し、切除後に発生するmetachronous gastric cancer(別部位の新規胃がん)がアスピリン投与群でどの程度抑制されるかを、5年間の投与とその後の追跡期間を通じて評価するものです。

対象者にはHelicobacter pyloriの陰性または除菌済みの状態の患者が含まれます。アスピリンには、血小板機能抑制を通じてがん細胞への炎症や増殖刺激を抑えるなど、がん発生予防の観点で観察研究でのデータがあり、それを試験で確かめようとしています。

ただし、アスピリン投与には出血リスクなど副作用の可能性があり、安全性についても慎重に検証される必要があります。効果はまだ検証中です。 NCBI+3センターウォッチ+3NCBI+3

やさしい表現

胃にがんができたけれど、早いうちに切除した方がいます。その人たちが、将来また胃がんができる可能性があります。

この試験では、その再発や新しいがんを減らすために、1日100ミリグラムのアスピリンを飲むことが役立つかどうかを調べています。アスピリンには血をサラサラにしたり、炎症を抑えたりする作用があり、がんができやすい状態を抑える助けになるかもしれません。

ただし、効果が確実かどうか、副作用はどれくらいあるかはまだ分かっておらず、研究で検証中です。必ず主治医と相談する必要があります。


患者さん向け解説

どんな治療なの?

この治療は、低用量アスピリン(100 mg/日、経口)プラセボ(偽薬) の比較です。対象は、早期胃がんまたは高異型度の腺腫(がんになる前の状態)を内視鏡で切除した方々で、ピロリ菌が 陰性 または除菌済みの方が含まれます。治験で使われるアスピリンは通常の医薬品で、予防目的で使われますが、まだ“標準治療”としては確立されていません。効果は検証中です。 センターウォッチ+2NCBI+2

治療の流れ

  • この試験ではまず、対象者は基準を満たしているかどうかスクリーニングされます。19〜70歳、内視鏡切除後、ピロリ菌状態など。 センターウォッチ
  • 治験参加が承認されたら、アスピリン100 mg/日かプラセボをランダムに割り当てられます(被験者も医者もどちらを飲むか知らない二重盲検試験)。 センターウォッチ
  • 投与期間は 5年間。その後も定期的に胃の検査などを行い、がんの発生がないか追跡調査が続きます。最終追跡は2030年まで行われる見込み。 NCBI+2NCBI+2

どのくらい通院が必要?

  • 定期的な通院が必要です。アスピリン服用中に副作用(特に消化管出血)がないかどうかを確認するため、血液検査や消化器系の検査、内視鏡検査などが含まれる可能性があります。
  • また、胃切除後のフォローアップや画像検査も含まれます。具体的な頻度は施設によって異なりますが、切除後・治験期間中は比較的定期的なチェックが求められます。

どんな検査があるの?

  • スクリーニング時:病理結果確認、内視鏡での切除部位の評価、Helicobacter pylori感染の有無確認。 センターウォッチ+1
  • 治療期間中:胃の内視鏡検査、定期的な診察、血液検査。副作用が疑われる場合や出血リスクが高いと判断された場合のモニタリング。
  • その他、がん発生の有無を調べるために画像検査または組織検査が行われることがあります。

日常生活の注意点

  • アスピリンには出血を促進する作用があるため、胃潰瘍があるか、出血しやすい病気があるかどうか、他の薬(抗凝固薬、他のNSAIDsなど)を飲んでいないかを医師に必ず伝えてください。
  • 飲酒や喫煙、刺激の強い食事など、胃に負担をかける行動を控えることが望ましいです。
  • 体調の変化(腹痛、黒い便、嘔吐、吐血など)があればすぐ医療機関に連絡してください。

参加を検討する方へ

  • この治療はあくまで研究中であり、すべての方に効果があるとは限りません。利益・リスクを慎重に考える必要があります。
  • 副作用としては、消化管からの出血、胃潰瘍、過敏反応などが考えられます。出血のリスクが高い方は除外されています。 センターウォッチ
  • 参加の可否やリスク・効果の見込みについては、必ず主治医と相談してください。

試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称
     NCT04214990 / Aspirin Use for Gastric Cancer Prevention in the Early Gastric Cancer Patients ClinicalTrials+2ClinicalTrials+2
  • スポンサー情報
     National Cancer Center, Korea(韓国国立がんセンター) ClinicalTrials+1
  • フェーズ/デザイン
     第3相(Phase 3)、多施設・二重盲検・プラセボ対照試験(randomized, double-blind, placebo-controlled) センターウォッチ+1
  • 対象疾患とバイオマーカー条件
     対象は胃がん(早期胃がん)または高異型度腺腫で内視鏡切除を受けた患者。ピロリ菌の状態は陰性または除菌済み。その他、切除後の病理所見が、日本の胃がん治療ガイドライン(2014年版、改訂版)で定義された 絶対適応基準または拡大適応基準 を満たすもの。 センターウォッチ+2NCBI+2
  • 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
     経口投与(錠剤)、アスピリン 100 mg/日。プラセボ対照。開始時期は内視鏡切除後(最終病理結果を確認後)およびスクリーニングと条件確認を経て。投与期間は5年間。経過観察はその後も続く。 センターウォッチ+2NCBI+2
  • 登録予定数と期間
     登録予定数は約1,700人。試験開始は2020年2月。終了予定日は2032年3月31日。 センターウォッチ+1
  • ステータス
     「募集中」(Active – Recruiting) センターウォッチ+2Val Connect+2
  • 治験参加国
     韓国のみ。複数の医療機関で実施されているが、国は韓国。 ClinicalTrials+2センターウォッチ+2
  • 出典リンク
     ClinicalTrials.gov: NCT04214990 ClinicalTrials+1

試験進捗状況

  • 登録状況/最終更新日
     登録対象1,700人を目指しており、「募集中(Active Recruiting)」のステータスです。 センターウォッチ+2Val Connect+2
  • 最終更新日(ClinicalTrials.gov の記録)については、特定の最新日付の確認は公表情報なし。 ClinicalTrials+1
  • 日本の参加有無
     公表情報では日本の医療機関の参加は含まれていません。試験実施施設はすべて韓国の施設です。日本での参加施設名は公表されていません。 シグマ+1

世界の疫学データ

  • 世界/日本の罹患率・有病率
     胃がん(胃腺がんなど)は、世界保健機関(WHO)や国際癌研究機関(IARC)のデータで、罹患数・死亡数で上位に位置づけられており、特に東アジアでは高頻度。例えば GLOBOCAN 2020 で、胃がんは新規罹患者数で全世界で5番目、死亡数で4番目のがんでした。 JGC Online+2NCBI+2
     日本ではスクリーニング制度や診断・治療の進歩により早期診断例が増えており、5年生存率も向上しています。韓国においても早期胃がん治療成績が良い。日本・韓国の罹患率は明確に高く、胃がん予防・再発予防の介入の意義が大きいとされています。 JGC Online+1

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。参加可否は必ず主治医とご相談ください。

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