臨床試験紹介(早期乳がん〈ER陽性/HER2陰性〉):Camizestrant(AZD9833)(NCT05952557)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

早期のホルモン受容体陽性(ER⁺)かつHER2陰性(HER2⁻)乳がんは、手術後にタモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などのホルモン療法を5年以上継続することが標準的です。しかし、この治療にもかかわらず再発リスクが一定数残ることが問題とされています。

本試験「CAMBRIA-2」は、飲み薬である新規選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)Camizestrant(AZD9833)を標準的なホルモン療法と比較し、再発抑制効果の向上を検証するフェーズ III の国際共同試験であり、再発リスクの高い患者さんへの新たな治療選択肢となる可能性があります。PubMedがん情報センターブレストキャンサー.org

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

Camizestrant(AZD9833)は選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり、エストロゲン受容体(ER)を標的として、がん細胞内においてその受容体を分解し、エストロゲンによる増殖刺激を遮断します。

本試験では、標準ホルモン療法(アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン)と比較し、再発をより効果的に抑制できるかどうかを検討します。

また、両群ともに併用療法としてCDK4/6阻害薬(Abemaciclib)を許可し、公表されたデータでは最大7年間の治療後、最長10年間にわたって追跡されます。PubMedがん情報センターHealth Research Authority

やさしい解説

Camizestrantは、新しいタイプのお薬で、がん細胞の増えるスイッチを壊す役割があります。

通常使われているお薬と比べて、がんが戻るのを防ぐ力が強いかもしれません。

さらに、必要に応じてAbemaciclibという別のお薬も一緒に使える設計になっており、長くしっかりと効果を調べる試験です。ただし、効果や安全性はまだ検証中です。

患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術後に再発リスクが高いと判断される方が対象です。特にER‐陽性かつHER2‐陰性の早期乳がんの方に参加する可能性があります。

どんな治療なの?

この治療は、飲み薬で行われます。

Camizestrant(AZD9833)
エストロゲン受容体を壊して、がん細胞の増殖のスイッチを止める働きをします。

(併用:Abemaciclib)
必要に応じて、別の飲み薬であるAbemaciclibを併用できる場合があります。

治療の流れ

  • 治療は7年間続く予定です。
  • 両群ともCamizestrantあるいは標準的なホルモン療法を飲み薬で継続します。
  • 必要に応じてAbemaciclibも併用できます。
  • その後、10年間にわたり経過観察を行います。PubMedHealth Research Authority

どのくらい通院が必要?

詳細な通院頻度はNCT情報では明記されていません(公表情報なし)。しかし、長期の治療と定期的な追跡観察が必要である可能性があります。

どんな検査があるの?

NCTページには記載がありません(公表情報なし)。通常、ホルモン療法では血液検査や骨密度、肝腎機能、心機能、画像検査(CTなど)が行われることがありますが、本試験の詳細は主治医や治験コーディネーターにご確認ください。

日常生活の注意点

長期の薬の服用と検査が必要になります。副作用や体調変化(例えば吐き気、倦怠感など)があった場合は、早めに医療機関へご連絡ください。治療中は無理のない生活を心がけましょう。

参加を検討する方へ

この治療はまだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用として、吐き気、下痢、光視症(視界のチカチカ)、徐脈(心拍の低下)などが報告されています。参加の可否やリスク・ベネフィットについては、必ず主治医とご相談ください。ブレストキャンサー.org

試験概要

試験進捗状況

  • 登録状況:現在募集中(Active)であることが確認されています。georgiacancerinfo.orgallclinicaltrials.com
  • 最終更新日:Breastcancer.orgでは2024年9月15日、AllClinicalTrialsでは2025年5月11日に情報更新あり。ブレストキャンサー.orgallclinicaltrials.com
  • 日本の参加有無:ClinicalTrials.govの施設情報に基づくと、日本国内の具体的施設名の記載はなく、「公表情報なし」となります。

世界の疫学データ

本試験対象の「ER⁺/HER2⁻早期乳がん」の世界および日本の罹患率・有病率について、この試験のNCT情報には記載がありません。信頼性の高いデータとして、例えばGLOBOCAN(2022年)によると、乳がんは世界的に最も多く診断されるがんの一つであり、日本でも女性のがん罹患率トップです(例:日本での女性乳がん罹患率は2020年代半ば時点で年間10万人あたり約80件前後)。

免責事項

本記事は臨床試験情報の提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。治験参加の可否やご自身のリスク・ベネフィットについては、必ず主治医とご相談ください。

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