臨床試験紹介(神経内分泌がん):PT217(Peluntamig) SKYBRIDGE 試験(NCT05652686)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

小細胞肺がん(SCLC)、肺の大細胞神経内分泌がん(LCNEC)、および肺外神経内分泌がん(EP-NEC)は進行性かつ再発リスクが高い疾患であり、治療選択肢が限られてきました。既存のプラチナ製剤や免疫チェックポイント阻害薬を含む治療が奏効しない場合、再寛解は困難です。

こうした現状を背景に、本試験「SKYBRIDGE」は、新規バイセプティック抗体PT217(Peluntamig)を用いて、単剤および化学療法や免疫療法との併用効果を検証し、安全性や有効性の可能性を検証中です。より多様な治療選択肢の創出を目指す意義ある試験です。

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

Peluntamig(PT217)は、DLL3およびCD47という2つのがん関連抗原を標的とする初のネイティブIgG様バイセプティック抗体です。

DLL3標的で神経内分泌がん細胞に作用しつつ、CD47標的でがん細胞による「免疫から逃れる信号(“eat me” を阻害する“don’t eat me” 信号の解除)」を阻害することで、免疫細胞によるがん細胞の排除を促進することが期待されます。

本試験は、まず単剤による用量漸増・用量拡張により推奨用量(RP2D)を決定し、さらに化学療法またはPD-L1阻害薬(アテゾリズマブ)との併用療法の有効性および安全性を評価しています。効果は現在検証中です。

やさしい解説

Peluntamigは、がん細胞にある特殊な目印(DLL3)を見つけて攻撃しやすくし、さらにがん細胞が「攻撃しないで」というサインを出すのを止めるお薬です。

まずはこの薬だけで体に合う量を探し、その後でがん治療によく使われるお薬と組み合わせて、さらに治療が効くかどうかを調べています。治療の効果はまだ研究中です。

患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方を対象としています。特に、小細胞肺がんや大細胞神経内分泌がん、肺以外の神経内分泌がんなどに有効な治療が期待される可能性があります。

どんな治療なの?

この治療は、Peluntamig(PT217)という新しい薬を使います。

Peluntamig(PT217)
がん細胞の特定の目印(DLL3)と、防御信号(CD47)を同時に狙う2つの標的をもつ薬です。がん細胞を免疫で攻撃しやすくする作用があります。

治療の流れ

  • 最初に、安全な用量と耐容性を確認するための“用量漸増試験”を行います。
  • その後、推奨用量(RP2D)で単独投与を継続。
  • 続いて、化学療法(プラチナ製剤+エトポシドなど)や免疫療法(アテゾリズマブ)との併用も行います。
  • 治療日は投与に加え、採血や診察が行われ、副作用や効果が確認されながら継続します。

どのくらい通院が必要?

用量探索中は通院頻度が高くなる可能性があります。推奨用量での投与では、3週間に1回程度の通院が想定されます。詳細は主治医とご相談ください。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(肝臓、腎臓機能、血液成分など)
  • 心機能の評価(必要に応じて)
  • 画像検査(CTなど)でがんの状態を定期的に確認します。

日常生活の注意点

治療中は疲れやすさや食欲低下、発熱などにご注意ください。体調の変化があった場合は、速やかに医療機関へご連絡ください。

参加を検討する方へ

この治療は研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用が出る可能性もあります。参加の可否やリスク・ベネフィットは、必ず主治医とよくご相談ください。

試験概要

試験進捗状況

開始日は2023年9月5日で、最終更新は2025年8月28日現在も進行中です。米国複数施設で実施されており、日本での参加施設については公表情報なしです。 fdaaa.trialstracker.netduke-research.dukehealth.orgaging.networkofcare.org

世界の疫学データ

本試験対象の疾患(SCLC、神経内分泌がん)の世界および日本における罹患率や有病率について、ClinicalTrials.govには記載がありません。信頼性の高い一次資料が見つからないため、本稿では省略とさせていただきます。

免責事項

本記事は臨床試験情報の提供を目的としており、治療の効果や安全性を保証するものではありません。参加を検討される場合は、必ず主治医とよくご相談ください。

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