はじめに(疾患背景と現行治療の課題)
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄中で白血球が異常に増殖し、正常な血液細胞が作られなくなる疾患です。
特にIDH1遺伝子変異を有するAMLでは、代謝異常が病態に寄与しており、予後も一般のAMLより厳しいとされています。
従来の強化化学療法(intensive induction chemotherapy)は効果的ですが、高齢者や合併症を抱える患者さんには耐えられない場合があります。
本試験は、標準治療が難しい患者さんでも、より低侵襲な治療法で病態にアプローチする意義が期待されます。センターウォッチ
治療の位置づけ(+やさしい解説)
専門的な解説
本試験では、IDH1変異陽性のAMLに対し、経口投与のイボシデニブ(ivosidenib)と注射によるアザシチジン(azacitidine)を併用します。
イボシデニブはIDH1変異酵素を阻害することで2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)の蓄積を抑制し、異常な幹細胞分化を正常化させる可能性があります。
アザシチジンはDNAのメチル化を修飾し、がん細胞の分化とアポトーシスを促進する作用を持ちます。
これらを併用することで、相乗的に治療効果の向上が期待されます。
なお、有効性と安全性は現在検証中です。センターウォッチDrugBank
やさしい解説
この治療は、体の中の「悪さをするスイッチ(IDH1変異)」を止める薬(イボシデニブ)と、がん細胞に「もう分裂できないよ」と教える薬(アザシチジン)を組み合わせています。
二つを一緒に使うことで、がんを抑えながら体への負担をできるだけ軽くすることが狙いです。
ただし、効果や安全性についてはまだ調べている最中です。
患者さん向け解説
この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術または強い化学療法が難しい方が対象です。特に、IDH1という遺伝子に変化(変異)があるAMLの方が対象になります。
どんな治療なの?
この治療は、2種類の薬を組み合わせて使います。
イボシデニブ(Ivosidenib)
IDH1という変異をもつ酵素に働きかけ、がん細胞の異常な代謝を正常に戻す可能性があります。
アザシチジン(Azacitidine)
がん細胞のDNAを変化させ、正常な分化や死を促すように働く薬です。
治療の流れ
- 参加者は28日を1サイクルとして、イボシデニブを毎日経口で服用します。
- アザシチジンは、各28日サイクルの初めの7日間に注射で投与されます。
- 副作用のモニタリングを行いつつ、継続的に治療を受けます。
センターウォッチ
どのくらい通院が必要?
基本的には28日ごとに通院が必要です。初期には副作用や体調の変化を詳しく確認するため、通院がやや多くなる可能性があります。センターウォッチ
どんな検査があるの?
- 血液検査(肝臓・腎臓の機能、血球数など)
- 心電図(ECG)などの心臓評価
- 定期的な身体診察と採血、必要に応じて他の検査も含まれます。センターウォッチ
日常生活の注意点
治療中は体調や食欲に注意し、無理を避けてください。発熱や息切れ、強い倦怠感など体調の異変があれば、すぐに医療機関へ連絡してください。
参加を検討する方へ
この治療はまだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用として、吐き気、疲労感、血液成分の変化などが起こる可能性があります。参加の可否やリスク・ベネフィットについては、必ず主治医とよくご相談ください。
試験概要
- 試験番号(NCT)/正式名称:NCT05907057/An Open-label Phase 3b Study of Ivosidenib in Combination With Azacitidine in Adult Patients Newly Diagnosed With IDH1m Acute Myeloid Leukemia (AML) Ineligible for Intensive Induction Chemotherapy
- スポンサー情報:Servier Affaires Médicales(企業スポンサー)センターウォッチ
- フェーズ/デザイン:フェーズ3b/オープンラベル(Open-label)EHA Libraryセンターウォッチ
- 対象疾患とバイオマーカー条件:新たに診断されたIDH1変異陽性急性骨髄性白血病(AML)、強化化学療法非適格者センターウォッチ
- 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング):28日サイクル。イボシデニブは毎日経口投与、アザシチジンはサイクル開始7日間を注射投与。センターウォッチ
- 登録予定数と期間:登録予定数245名。試験開始:2023年6月14日。終了予定:2026年12月15日。センターウォッチ
- ステータス:募集中(Active – Recruiting)。最終更新:2023年11月16日。センターウォッチ
- 治験参加国:オーストラリア、フランス、イタリア、オランダなど(日本での施設は公表情報なし)。センターウォッチ
- 出典リンク:ClinicalTrials.gov の該当試験ページを出典としています(NCT05907057, クリニカルトライアルズ.ゴヴ)センターウォッチ
試験進捗状況
- 登録状況:募集中(Active – Recruiting)センターウォッチ
- 最終更新日:2023年11月16日センターウォッチ
- 日本の参加有無:日本での参加施設は公表情報にありません。→「公表情報なし」
世界の疫学データ
AMLの罹患率は、世界で年間数人〜十万人あたり数人とされ、高齢者を中心に増加しますが、IDH1変異型AMLの正確な頻度は限られた報告しかありません。
免責事項
本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。参加可否は必ず主治医とご相談ください。
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