臨床試験紹介(転移性大腸がん〈MSI-H/dMMR〉):HX008(抗PD-1抗体)(NCT05652894)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

転移性結腸直腸がん(mCRC)のうち、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)のサブタイプは、免疫チェックポイント阻害薬に反応する可能性が認められています。

しかしながら、一次治療としてのPD-1阻害薬の効果と安全性を、大規模な第III相試験で評価するエビデンスは限定的です。

本試験では、新規PD-1阻害抗体「HX008(ピュコテンリマブ)」を、従来の化学療法と直接比較し、無増悪生存期間(PFS)を指標にその有効性を明らかにする狙いがあります。

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な解説

HX008 はヒト化モノクローナル抗体として PD-1(Programmed cell death protein 1)を阻害します。

PD-1はがん細胞が免疫細胞に攻撃されないようにする「免疫チェックポイント」です。これを阻害することで、T細胞が再びがん細胞を認識・攻撃できるようになり、生存期間の延長が期待されます。

ただし、本試験ではその有効性と安全性を検証中です。

やさしい解説

がん細胞は「攻撃しないで」と免疫にシグナルを出し攻撃を免れます。

HX008はこのシグナルを遮断し、免疫が再びがんを攻撃できるよう助けます。

化学療法と直接比べて、治療効果や副作用の違いを調べる試験です。続けてやさしく言えば、どちらの治療がよりがんの進行を抑えるか、安全に使えるかを比べる研究です。

患者さん向け解説

どんな治療なの?

この治療は、PD-1 を標的とする注射薬(HX008)と、通常選ばれる化学療法を比較します。
HX008 は3週間に1回、200mgを静脈注射で投与します。一方、化学療法は mFOLFOX6 や FOLFIRI に、ベバシズマブまたはセツキシマブを組み合わせたもので、担当医の判断で選ばれます(IV 投与)。

治療の流れ

  • いずれかの治療をランダムに割り当てられます。
  • HX008 群なら、初回以降 3 週間ごとに 200 mg を静脈注射します。
  • 化学療法群では、mFOLFOX6 または FOLFIRI 等、抗がん剤に加えて抗VEGF抗体(ベバシズマブ)または抗EGFR抗体(セツキシマブ)の組み合わせが使われます。
  • 各治療日は点滴、採血、診察が行われ、副作用や効果を観察しながら次のサイクルへ進みます。

どのくらい通院が必要?

基本的に3週間に1回の通院が必要です。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(肝腎機能、血球数など)
  • 必要に応じて画像検査(CTなど)でがんの状態を評価
  • 一部施設では心機能評価等も実施される可能性があります(公表情報なし)

日常生活の注意点

治療中は体調の変化(発熱、倦怠感など)に気を付けて無理せず過ごしてください。異常を感じたらすぐ医療機関へ連絡してください。

参加を検討する方へ

本治療は研究段階であり、誰にでも効果があるわけではありません。副作用や効果には個人差があり、すべてが検証中です。治療のメリット・リスクについては必ず主治医とよく相談してください。


試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称
    NCT05652894 / A Randomized Phase III Study of HX008 (a Humanized Monoclonal Antibody Against PD-1) Compared to Investigator’s Choice Chemotherapy in the First-Line Treatment of Subjects With MSI-H/dMMR Metastatic Colorectal Cancer CDEKSynapse
  • スポンサー情報
    Taizhou Hanzhong Biomedical Co., Ltd. CDEKSynapse
  • フェーズ/デザイン
    フェーズIII/無作為化・並行群間比較試験(オープンラベル) CDEK
  • 対象疾患とバイオマーカー条件
    転移性結腸直腸がん、MSI-H または dMMR がんのみ対象 CDEKFight CRC
  • 投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)
    • HX008:200 mg を静脈注射、3週間ごと(Q3W)
    • 化学療法:mFOLFOX6 または FOLFIRI、ベバシズマブまたはセツキシマブ併用を担当医が選択、IV 投与 CDEKFight CRC
  • 登録予定数と期間
    登録予定数:190名
    試験開始:2022年12月20日(実施)
    PFSを一次評価項目とする予定完了:2026年1月19日(予定)
    試験完了:2028年10月20日(予定) CDEK
  • ステータス
    現在「参加者募集中ではない(Not yet recruiting)」 CDEKFight CRC
  • 治験参加国
    主に中国の複数施設(例:北京、瀋陽、武漢、長沙など) Fight CRC
  • 出典リンク
    ClinicalTrials.gov 試験ページ(NCT05652894)および上記引用情報

試験進捗状況

  • 登録状況:現時点では「Not yet recruiting」であり、参加者の登録は開始されていません。Fight CRC
  • 最終更新日:2022年12月15日(最終情報更新)CDEK
  • 日本の参加有無:施設リストに日本は含まれておらず、「公表情報なし」となります。

世界の疫学データ

本試験は MSI-H/dMMR 転移性結腸直腸がんが対象ですが、これらの頻度はがん全体では比較的低く、一般的には結腸直腸がんの約5~15%とされています(参考:国際がん研究機関 IARC や WHO の統計データを参照推奨)。

ClinicalTrials.gov に疫学情報はなく、詳しい罹患率は WHO や IARC の最新報告をご参照ください。


免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。参加の可否については必ず主治医とご相談ください。


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