臨床試験紹介(胃がん・食道胃接合部がんの一次療法):Trastuzumab Deruxtecan(ENHERTU®, T-DXd)+Pembrolizumab+化学療法/標準的併用療法(NCT06731478)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

胃がんや食道胃接合部(GEJ)がんの多くは進行した状態で診断され、治療の第一選択としてHER2陽性腫瘍には抗HER2抗体であるトラスツズマブと化学療法併用療法が標準となっています。しかし、腫瘍の再発・進行が早期に起こることや、副作用の課題も多く、治療成績のさらなる改善が求められています。DESTINY‑Gastric05試験(NCT06731478)は、トラスツズマブ・デラクステカン(ENHERTU®, T‑DXd)を中心とした新しい三剤併用療法やプラチナフリー療法が、より良い治療成績と安全性をもたらす可能性があるかを検証するためのフェーズIII試験として重要です(登録中)ClinicalTrials+7CDEK+7Medthority+7

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な説明

本試験では、HER2陽性でPD‑L1 CPSによるバイオマーカーに基づき分けられた対象者に対し、トラスツズマブ・デラクステカン(T‑DXd)とフルオロピリミジン系化学療法およびPembrolizumab(三剤併用)を新たな一次治療として、従来のトラスツズマブ+プラチナ系化学療法+Pembrolizumabとの比較を行い、有効性(PFS、OSなど)と安全性を検証します。また、PD‑L1 CPSが低い群(CPS < 1)では探索的にT‑DXd+フルオロピリミジン単独との比較も実施されますCDEK+1

やさしい解説

この治験では、新種の抗がん薬(T‑DXd)が既存の免疫療法(Pembrolizumab)や化学療法と組み合わせることで、がんを抑える力を「もっと強く、早くしたい」というねらいがあります。現在主に使われている治療と比べて、もっと効くか、または負担が少ないかどうかを比べるための研究です。ただし、効果についてはまだ「検証中」です。


患者さん向け解説

この試験は、既存の治療が十分に効きにくくなった方、または再発・転移した進行胃がん・GEJがんを対象とします。特に、がん細胞の表面にHER2という目印がある方、またはその遺伝子に異常がある方が対象となる可能性があります。

どんな治療なの?

この治療は、主に以下の薬を組み合わせます。

T-DXd(トラスツズマブ デラクステカン)
HER2というがん細胞の目印に結合し、薬を細胞に届けてDNAを傷つけて死滅させる薬です。

Pembrolizumab(ペムブロリズマブ)
免疫の「ブレーキ」を解除し、がんを攻撃しやすくする免疫療法薬です。

化学療法(フルオロピリミジン系 ± プラチナ系)
がん細胞の増殖を抑える従来型の治療です。

治療の流れ

  • 3週間に1回(Q3W)、点滴で注射します。
  • T‑DXd、Pembrolizumab、化学療法(5‑FUまたはカペシタビン、必要に応じてプラチナ系)を同時に投与する予定です。

どのくらい通院が必要?

基本的には3週間に1回の通院が必要です。初期は副作用の経過観察もあるため通院回数が多くなる可能性があります。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(血球、肝腎機能など)
  • 心機能検査(心臓の状態を把握する)
  • 画像検査(CTやMRIでがんの反応を評価)

日常生活の注意点

体調や食欲の変化に注意し、発熱、息切れ、強い疲労感などがあれば早めに医療機関へ連絡してください。無理のない生活を心がけましょう。

参加を検討する方へ

まだ研究段階であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用として吐き気、倦怠感、血球の減少などが生じる可能性があります。参加を検討される場合は必ず主治医とご相談ください。


試験概要

  • 試験番号(NCT)/正式名称
    NCT06731478/A Multicenter, Randomized, Open‑Label, Phase 3 Trial of Trastuzumab Deruxtecan (Enhertu®) Plus Chemotherapy Plus or Minus Pembrolizumab Versus Chemotherapy Plus Trastuzumab Plus or Minus Pembrolizumab as First‑Line Treatment in Participants With Unresectable, Locally Advanced or Metastatic HER2‑Positive Gastric Or Gastroesophageal Junction Cancer (DESTINY‑Gastric05)ClinicalTrials+9CDEK+9GenesisCare+9
  • スポンサー情報
    Daiichi SankyoClinicalTrialsCenterWatch
  • フェーズ/デザイン
    フェーズIII、無作為化、オープンラベル、並行群比較(Parallel)CDEKctv.veeva.com
  • 対象疾患とバイオマーカー条件
    未治療の切除不能・進行再発HER2陽性胃がんまたはGEJがん。PD‑L1 CPS ≥ 1がメインコホート、CPS < 1は探索的評価Carebox Connect+7CDEK+7Medthority+7
  • **投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング)**
    T‑DXd:5.4 mg/kg IV Q3W
    Pembrolizumab:200 mg IV Q3W
    トラスツズマブ:初回8 mg/kg IV、以降6 mg/kg Q3W
    化学療法:フルオロピリミジン系(5‑FUまたはカペシタビン)、プラチナ系併用可GenesisCare+7CDEK+7CenterWatch+7
  • 登録予定数と期間
    全体で726名を予定。開始は2025年2月27日、プライマリー・コンプリートは2028年6月1日、全体終了は2030年2月1日(推定)CDEK
  • ステータス
    現在「募集中」(Recruiting/Active – Recruiting)CDEKCenterWatch
  • 治験参加国
    日本を含む多国(アルゼンチン、豪州、欧州、中国、台湾、米国など多数)。日本では多くの施設(例:国立がん研究センター東病院など)で「募集中」CenterWatch
  • 出典リンク
    ClinicalTrials.govおよびCenterWatchなど信頼性の高い情報源CDEKCenterWatch

試験進捗状況

本試験は2025年2月27日に開始され、最新の更新日は2025年7月14日です(実際の開始および最新情報)CDEK。現在、世界各地で募集中であり、日本国内の主要施設(例:国立がん研究センター、都立駒込病院、JCHO九州病院など)も参加中ですCenterWatch


世界の疫学データ

現時点で本試験対象の胃がん/GEJがんに関する世界および日本の最新罹患率・有病率データは ClinicalTrials.gov には記載されておりません。必要であれば、WHOや日本のがん統計(国立がん研究センター)など、信頼できる公的資料を別途参照してご案内可能です。


免責事項

本記事は臨床試験情報の提供を目的としており、治療効果や安全性を保証するものではありません。治療の適否やリスク・利益については必ず主治医とご相談ください。

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