臨床試験紹介(胃がんの一次療法):Disitamab vedotin(RC48-ADC)+トリパリマブ+化学療法/トラスツズマブ(NCT05980481)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

胃がんは世界的に発症数が多いがんで、2022年には世界で約96万9,000件、日本では約12万7,000件の新規発症が報告されています World Cancer Research Fund。現行の一次治療としては化学療法やHER2標的療法(トラスツズマブなど)が中心ですが、HER2陽性でも効果が持続しない、HER2低発現でも対応が難しい、奏効率やPFSに限界があるといった課題があります。この試験(NCT05980481)は、HER2発現(IHC 1+~3+)の進行・転移性胃がんに対し、RC48‑ADC(Disitamab vedotin)と免疫チェックポイント阻害薬トリパリマブ、化学療法またはトラスツズマブを併用し、より高い治療効果を期待して検証中です careacross.comcenterwatch.com


治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な説明

本試験では、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるDisitamab vedotin(RC48‑ADC)がHER2陽性腫瘍細胞に結合し、細胞内に微小管阻害剤を届けることでがん細胞死を誘導します。さらに、PD‑1阻害薬トリパリマブを併用することで免疫反応を再活性化し、化学療法あるいはトラスツズマブとの併用により多層的に腫瘍に攻撃を仕掛ける戦略です。効果はまだ検証中です。

やさしい解説

この治療では、がん細胞にくっつく薬(Disitamab vedotin)でがんを見つけて攻撃しやすくしつつ、もう一つの薬(トリパリマブ)で免疫のブレーキを外して、がんに対する体の守りを元に戻します。その上で、強力な抗がん剤やトラスツズマブを組み合わせることで、一段と効果が期待できるようにしています。ただし、まだ研究中で、効果や安全性はこれから詳しく確認されます。


患者さん向け解説

この試験は、これまでの治療が効きにくくなった方や、手術が難しい方が対象です。特に、HER2という目印が少しでもある(HER2 IHC 1+、2+、3+)方が参加の可能性対象です。

どんな治療なの?

この治療は、3種類の薬を組み合わせて使います。

Disitamab vedotin(RC48-ADC)
HER2というがんの目印に結合して体内に有害な抗がん成分を届け、がん細胞を破壊する薬です。

トリパリマブ(PD-1阻害薬)
免疫の“ブレーキ”を解除し、がんを攻撃する力を復活させる薬です。

化学療法(CAPOX:カペシタビン+オキサリプラチン)またはトラスツズマブ
がん細胞を直接狙い撃ちする薬剤を追加する治療です。


治療の流れ

  • Disitamab vedotinは2.5 mg/kgを2週間ごとに点滴投与します。
  • トリパリマブは3.0 mg/kgを2週間ごとに点滴投与します。
  • 併用薬としては、トラスツズマブ(初回8.0 mg/kg負荷、以後6.0 mg/kg 3週間ごと)またはCAPOX(オキサリプラチン130 mg/m² 3週ごと、カペシタビン1000 mg/m² 3週ごと)です careacross.com

どのくらい通院が必要?

主に2週間または3週間ごとの通院が必要です。薬の投与に加え、検査(採血、診察、画像検査など)も行われます。


どんな検査があるの?

  • 血液検査(肝臓・腎臓機能、血液成分など)
  • 心機能・電解質検査
  • 画像検査(CTなど)
  • 副作用のチェック(例:血球減少、下痢など)

日常生活の注意点

治療中は体調、特に発熱、だるさ、下痢、食欲低下などに注意し、異常があれば医療機関へ早めに連絡してください。


参加を検討する方へ

この治療は研究中であり、すべての方に効果があるとは限りません。副作用として、血球減少、下痢、食欲低下、電解質異常(低カリウム血症など)の可能性があります Cancer NetworkOncLive。参加の可否やリスク・ベネフィットは、必ず主治医とよく相談してください。


試験概要


試験進捗状況

  • 登録状況:募集中です
  • 最終更新日:CenterWatchでは2024年6月19日時点、CareAcrossには最新情報として載っています centerwatch.com
  • 日本の参加有無:日本での施設参加は「公表情報なし」です。

世界の疫学データ

  • 世界:2022年に胃がんは約96万9,000件発生し、世界第5位の発症頻度でした。死亡数は不明ですが、多くの国で高い死亡率が課題です World Cancer Research Fund
  • 日本:2022年には約12万6,724件の新規発症、年齢調整罹患率は100,000人あたり27.6件で世界でも高い水準です World Cancer Research Fund

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、治療の効果や安全性を保証するものではありません。治験参加の可否は必ず主治医とご相談ください。

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