臨床試験紹介(非小細胞肺がんの術前治療):Pembrolizumab(MK-3475)+探索的薬剤群(NCT06788912)

はじめに(疾患背景と現行治療の課題)

非小細胞肺がん(NSCLC)は、早期であっても手術後に再発のリスクがあり、術前(ネオアジュバント)治療が注目されています。既存の化学療法のみでは腫瘍縮小や転移制御が十分でない場合があり、免疫チェックポイント阻害薬などを術前に用いることで効果を高める試みが進行中です。本試験は、Pembrolizumab(MK‑3475)と複数の探索的併用薬剤を術前および術後に投与することで、切除可能なステージ II〜IIIB(N2)のNSCLC患者において腫瘍やリンパ節にがん細胞が残存しない病理的完全奏効(pCR)の達成率や腫瘍縮小の度合いを評価する意義があります。ctv.veeva.com+8Merck Clinical Trials+8+8DrugBank+4センターワッチ+4ctv.veeva.com+4

治療の位置づけ(+やさしい解説)

専門的な説明

本試験では、Pembrolizumab(免疫チェックポイント阻害薬:PD‑1抗体)と、標準的に使用されるプラチナ製剤ベースの化学療法(シスプラチン+ジェムシタビン/ペメトレクスド/パクリタキセル、またはカルボプラチン+パクリタキセル/ペメトレクスド/ジェムシタビン)を術前(ネオアジュバント)に併用します。さらに、Sacituzumab tirumotecan(抗体薬物複合体)を追加併用する群も設けられ、術後にはPembrolizumabによる免疫療法を最大13サイクルまで継続します。目的は、手術前の腫瘍縮小と手術後の再発抑制の両立により、病理的奏効や長期生存を向上させる可能性を評価することです。試験デザインはオープンラベルの並行群比較試験で、登録予定数は約60名です。ctv.veeva.com

やさしい解説

この治療は、手術前後のがんへの働きかけを強める2つのアプローチを組み合わせています。ひとつは、がんを攻撃する“免疫”を働かせる薬(Pembrolizumab)と、がん細胞を直接攻撃する抗がん剤を一緒に入れることです。もうひとつは、がん細胞に薬を届ける“目印付き薬”Sacituzumab tirumotecanを追加する方法です。さらに、手術が終わった後にも免疫の力を維持するためPembrolizumabを続けて投与します。これにより、がんが小さくなって手術がしやすくなるだけでなく、手術後の再発を抑える手助けになる可能性があります。ただし、あくまでも「検証中」であり、すべての方に効果があるとは限りません。主治医との相談が不可欠です。

患者さん向け解説

どんな治療なの?

この治療は、免疫を活性化する薬と複数の抗がん剤、および手術後の免疫維持療法を組み合わせるものです。

Pembrolizumab(ペムブロリズマブ)
免疫の「ブレーキ」を外し、がんを再び“敵”として見つけて攻撃できるようにする薬です。

抗がん剤
シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレクスド、ジェムシタビン、パクリタキセルなど、がんの種類に応じて使い分けられる治療薬です。

Sacituzumab tirumotecan
がんを目印に結合し、その中に薬を届ける“標的型の抗体薬物複合体”です。がん細胞を更に効果的に狙えるようにします。

治療の流れ

  • 術前(ネオアジュバント):Pembrolizumabを3週間ごとに4回投与し、同時にプラチナ製剤+抗がん剤、またはSacituzumab tirumotecanを併用します。
  • 手術:腫瘍の切除を行います。
  • 術後(アジュバント):Pembrolizumabを3週間ごとに最大13回投与し、免疫をサポートします。場合によっては追加の抗がん剤が選択的に使われることもあります。ctv.veeva.comセンターワッチ

どのくらい通院が必要?

基本的には3週間に1回の通院治療となります。ただし、術前の併用療法中や術後の免疫療法では通院頻度が増える可能性があります。

どんな検査があるの?

  • 血液検査(肝・腎機能、血球など)
  • 画像検査(CTなど)による腫瘍の状態確認
  • 手術前後の病理評価によるがん細胞の残存有無の確認
  • 体調や副作用のチェック(必要に応じて)

日常生活の注意点

治療中は体調の変化、倦怠感、発熱、吐き気などに注意が必要です。何か異変を感じたら、速やかに医療機関にご相談ください。

参加を検討する方へ

この治療は現在研究段階であり、効果があるとは限らず副作用の可能性もあります。参加の可否やリスク・ベネフィットについては主治医と十分にご相談ください。

試験概要

試験番号(NCT)/正式名称:NCT06788912/Pembrolizumab (MK‑3475) Plus Investigational Agents in Resectable Non‑Small Cell Lung Cancer (MK‑3475‑01E / KEYMAKER‑U01)
スポンサー情報:Merck Sharp & Dohme LLC(MSD)+8センターワッチ+8Smart Patients+8
フェーズ/デザイン:第2相、オープンラベル、並行群比較(ランダム化あり)試験ctv.veeva.comセンターワッチ
対象疾患とバイオマーカー条件:切除可能なステージ II、IIIA、IIIB(N2)非小細胞肺がん。EGFR標的治療適応外。ECOG PS 0または1。クリニカルトライアルズ+8センターワッチ+8ctv.veeva.com+8
投与プロトコール(間隔、経路、開始タイミング):術前にPembrolizumab 200 mg Q3W ×4サイクル併用治療(抗がん剤群またはSacituzumab tirumotecan群)、術後Pembrolizumab 200 mg Q3W 最大13サイクル。経静脈投与。ctv.veeva.com+1
登録予定数と期間:60名予定、開始:2025年3月20日、主要評価終了予定:2031年11月5日、全体完了予定:2032年2月7日。Merck Clinical Trials
ステータス:募集中(Active – Recruiting)センターワッチ
治験参加国:チリ、イタリア、ポーランド、トルコ、ウクライナ、アメリカ(メリーランド州ボルチモア等)。日本の施設掲載はなし(公表情報なし)。センターワッチSmart Patients
出典リンク:ClinicalTrials.gov に準拠(NCT06788912)、Merckの公式情報、CenterWatch、Smart Patients などctv.veeva.com+7Merck Clinical Trials+7Smart Patients+7

試験進捗状況

登録状況:2025年3月に開始され、現在も参加募集中。
最終更新日:Smart Patients 経由情報では2025年7月14日にMerckから提供された情報が最終更新。Smart Patients
日本の参加有無:日本での施設掲載はなく、公表されていません。

世界の疫学データ

本試験対象である非小細胞肺がん(NSCLC)は、肺がん全体の約80〜85%を占め、日本においても国内罹患数は年間約7万人、死亡数も同様に多く、世界的にも主要ながん種の一つです。世界では年間約200万人が肺がんを発症しており、そのうちNSCLCが大多数を占めています(国際がん統計 GLOBOCAN 2020 など)※正確な数字については改めてWHOやGLOBOCANから参照可能です。PubMed

免責事項

本記事は臨床試験の情報提供を目的としており、効果や安全性を保証するものではありません。治験への参加の可否や治療リスク・ベネフィットについては、必ず主治医とご相談ください。

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